ロシア、ルクセンブルクとの二重課税防止条約を改定

(ロシア、ルクセンブルク)

欧州ロシアCIS課

2020年11月13日

ロシア財務省は11月6日、ルクセンブルクとの二重課税防止条約を改正する協定に署名した。租税回避地であるキプロスやマルタとの条約改定に続くもので、「新型コロナウイルス禍」対策に必要な財源確保が狙い。

ロシアにとってルクセンブルクは主要な投資相手国の1つ。今回締結した協定はキプロスやマルタと同様の内容で、これまで5%または10%だった配当・利子への課税率を原則15%に引き上げるもの(2020年9月17日記事参照)。

例外として、保険会社、年金基金などの機関投資家や特定の条件を満たす上場企業(注)に対しては、5%の税率が適用される。社債やユーロ債、外国銀行による融資に関連する利払いには課税されない。発効は2021年1月1日を予定しているが、両国での批准手続き次第で後ろ倒しとなる可能性もある。

ロシア財務省のアレクセイ・サザノフ次官兼官房長は今回の条約改定に当たり、「ロシア政府は国民向けの支援や経済対策のため財源確保に注力している」と述べた。

今後焦点となるのは、オランダとの二重課税防止条約の改定だ。ロシア財務省はオランダと協議を進めているが、ロシアの税務会計コンサルティング会社クロウ・エクスペルティザのパートナーで国際税務分野の専門家のルスタム・バヒトフ氏は、交渉は難航するとみている。オランダにはロシア企業やロシアに子会社を有する多国籍企業が数多く拠点を有しており、現行の租税条約を改定すると、大きな影響が生じる可能性があるためだ。このため、バヒトフ氏は「キプロスやマルタ、ルクセンブルクとの協定に比べ、企業側に都合の良い内容になる」との見方を示している(「コメルサント」紙11月7日)。

(注)株式公開比率15%以上かつ自己資本比率15%以上の上場企業。

(齋藤寛)

(ロシア、ルクセンブルク)

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