新型コロナによる国内市場の変容分析、「ジェトロ対日投資報告2020」を発表

(日本)

対日投資課

2020年11月26日

ジェトロは11月25日、「ジェトロ対日投資報告2020」(注1)を発表した。6回目となった今回の報告は、副題を「新型コロナで変容する日本市場と今後の外資系企業のビジネス展開」とし、対日直接投資や日本のビジネス環境整備のほか、2020年の日本市場の動向やその変容、活躍をみせる外資系企業などに焦点を当てた。

2019年の対日直接投資額(ネット、フロー)は前年比37.3%増の4兆円で、2016年に次いで過去2番目に大きかった。米国が全体の48.3%と約半分を占めたほか、香港、シンガポール、中国などアジア主要国・地域からの投資の増加が顕著だった。対日直接投資統計の資本形態のうち、外国投資家による株式取得など資本の拠出を示す株式資本をみると、2019年は1兆2,000億円で過去最大となった。2020年1~9月をみても前年同期比13.6%増となるなど、株式資本投資は堅調に推移している。他方、グリーンフィールド投資件数は直近数年の同期と比較すると少なく、今後の新規投資案件数は注視が必要だ。

2020年は、日本国内のあらゆる側面で新型コロナウイルスによる影響がみられるものの、外資系企業の日本への関心は引き続き高い。ジェトロが2020年4月と7月に外資系企業を対象に実施したアンケート調査(注2)によると、90%以上の企業が新型コロナウイルスによってビジネスにマイナスの影響を受けていると回答した。売り上げ減少をその要因に挙げる企業が多く、減少した売り上げの補填(ほてん)には2021年上半期までの期間を要するという回答が最も多かった。そのような環境下、国内ビジネスの縮小や撤退を検討する企業は1割に満たず、大半の企業が日本でビジネスを継続すると回答した。日本市場の魅力としては、6割以上の企業が現在の市場規模や関連産業の成長性を挙げた。

国内市場は3~5月ごろを底に減速が続く一方で、新たなビジネス機会につながる変容として、テレワークの導入やオンライン消費、キャッシュレス決済利用の増加などが見られた。テレワークの増加によって浮き彫りとなった社内コミュニケーションや業務管理、書類への押印などの課題に関し、関連サービスを提供する外資系企業のビジネス拡大などがみられており、各所で外資系企業の活躍が期待される。

「ジェトロ対日投資報告2020」の本文・概要は「ジェトロ対日投資報告」ページを参照。

(注1)ジェトロ対日投資報告:日本の対内直接投資の動向や、政府によるビジネス環境整備のための関連施策、日本市場の変容、ジェトロの対日直接投資支援の活動などを包括的にまとめた報告書。2015年度から毎年発行しており、今回で6回目の発表となった。

(注2)「新型コロナ禍」におけるジェトロの外資系企業向けのアンケート調査:ジェトロは支援企業を主な対象として、2020年4月と6~7月に、新型コロナウイルスによる企業への影響や今後のビジネス展開についてアンケート調査を実施した。4月調査は外資系企業376社、7月調査は193社より回答を入手し、分析している。

(長崎勇太)

(日本)

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