バイデン政権誕生すれば、自動車排ガス規制など見直しの可能性大

(米国)

ニューヨーク発

2020年11月10日

米国大統領選挙(11月3日)では、民主党候補のジョー・バイデン前副大統領の当選が確実になったことが報じられているが(2020年11月9日記事参照)、バイデン氏は最優先課題の1つに気候変動対策を掲げており、政権が交代すれば、米国の温室効果ガス(GHG)排出量の2割以上を占める自動車産業が受ける影響は大きい。バイデン氏が掲げる政策「クリーンエネルギー革命」の一部を、同氏の発言や報道などからまとめてみた。

バイデン氏は選挙運動の中で、2050年までに米国のGHG排出量をネットベースでゼロにまで削減することを表明。1期目の最終年に当たる2025年までに、目標達成に向けた一定のターゲットを設定すると発表した。同時に、クリーンエネルギーの研究などに対し、10年間で4,000億ドルを投資すると述べた。また、11月4日に米国が正式に脱退した、地球温暖化防止のための国際協定であるパリ協定に再び参加し、各国と協調するとともに米国のリーダーシップを取り戻すことを明らかにした。

自動車産業に関しては、電気自動車(EV)の普及を加速するため、地方自治体と協力して、2030年末までに50万台を超える新しい公共の充電器を設置するすると発表。さらに、現在一定の販売台数に限られているEVの税額控除制度を見直し、購買者の裾野を中産階級にまで広げることを目指すと述べた(2018年11月16日記事参照)。さらに、政府が所有する300万台の車両を全てEVにすることも報じられている(CNBC9月14日)。

GHG排出規制に関しては、トランプ政権が緩和した規制内容を見直した上で、オバマ政権下で制定された基準値(注)を上回る基準の制定に取り組むと述べた。なお、下院民主党による気候変動危機特別調査委員会は2020年6月に発表した報告書「地球温暖化危機の解決(Solving the Climate Crisis)」の中で、車両からのGHG排出量を2026年製から5年間、毎年6%ずつ削減する内容の推奨案を提示している。

雇用に関しては、クリーンエネルギーが仕事に直結しないという古い考え方を取り除く必要があるとし、気候変動に対応するため、全産業で1,000万人以上の雇用を創出すると発言。自動車産業に限っては、ガソリン車からEVへのシフトなどで、新たに100万人分の雇用を創出すると述べた。

(注)オバマ政権下では、2022~2025年製の乗用車と小型トラックのGHG排出量を毎年5%ずつ削減する基準が制定されていた。

(大原典子)

(米国)

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