ビクトリア州予算案、雇用創出による経済回復を目指す

(オーストラリア)

シドニー発

2020年11月26日

オーストラリア第2の都市メルボルンを州都とするビクトリア(VIC)州政府は11月24日、2020/2021年度(2020年7月~2021年6月)の予算案(注)を発表し、2025年までに40万人の雇用創出を目指す計画を打ち出した。新型コロナウイルスの感染再拡大に見舞われたVIC州では、2020年第1四半期(1~3月)から第3四半期(7~9月)の間に18万人の雇用が失われた。

予算案では、企業が雇用を維持するための賃金補助や、女性の職場復帰支援、失業者の就職支援や職業訓練などに6億1,900万オーストラリア・ドル(約476億6,300万円、豪ドル、1豪ドル=約77円)を拠出する。また、道路や鉄道、学校建設などのインフラ事業、再生可能エネルギーやリサイクル関連のプロジェクトを推進し、雇用を創出する。

経済回復にはイノベーションが不可欠だとして、「ブレークスルー・ビクトリア・ファンド」を設立し、医療、健康・ライフサイエンス、農業・食品、先端製造、クリーンエネルギー、デジタル技術などの分野の研究開発や商業化を支援するため、今後10年間で20億豪ドルを拠出し、1万5,700人の雇用を支援する。

税制・労務関連では、中小企業の新規雇用や再雇用にかかる給与税に対して、税額控除を2年間提供するほか、2021年1月1日から商業および工業用不動産の購入に対する印紙税を50%免除し、企業の開業や移転、事業拡大を支援する。また、優先的な産業分野で従事する非正規労働者に対して、最低賃金額相当の支払いが補償される病気や介護のための休暇を最大5日間付与する制度を創設し、試験的に2年間運用するとしている。

VIC州経済は2019/2020年度に0.25%縮小し、2020/2021年度にはさらに4.0%縮小するが、2021/2022年度には7.75%まで大幅に回復すると見込まれている。失業率は2020/2021年度に7.75%でピークを迎え、2021/2022年度に7.0%、2022/2023年度に6.25%、2023/2024年度に5.75%と、次第に改善すると予測している。なお、州の財政は、2021/2022年度に233億豪ドルの赤字を見込んでいる。

(注)2020/2021年度予算案の発表は5月に予定されていたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響により延期されていた。

(住裕美)

(オーストラリア)

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