中銀、デジタル通貨「バコン」の正式運用を開始

(カンボジア)

プノンペン発

2020年11月12日

ブロックチェーンの技術開発などを行う日本のソラミツによるとカンボジア国立銀行(NBC、中央銀行)は10月28日、同社と共同で開発したデジタル通貨「バコン」の運用を正式に開始した。

写真 ソラミツのロゴ(ソラミツ提供)

ソラミツのロゴ(ソラミツ提供)

「バコン」はスマートフォンのアプリを使い、電話番号またはQRコードで店舗への支払いや個人間・企業間の送金ができる決済システムだ(2019年12月26日記事参照)。バコンは多要素認証の本人確認システムを構築しており、エンドユーザーはSMS検証を使用して少額決済が可能なバコン口座を開くことができる。ただし、高額決済が可能なバコン口座の開設には、アプリを使用または銀行の支店で政府IDを登録し、厳格な本人確認を行わなければならない。

バコンは2019年7月からアクレダ銀行、バタナック銀行、外国貿易銀行、ウィングの4つの金融・決済機関と連携してパイロット事業を始め、カンボジア国内で現在18の金融機関の決済システムと連携が可能になっている。

特徴としては、同社が開発したブロックチェーン「ハイパーレジャーいろは」を活用していること、決済手数料が無料であること、高速取引できることなどが挙げられる。スマートフォンに使い慣れている若い世代が利用しやすいと考えられるが、NBCが狙いとしているのは、銀行口座を保有していない金融サービスにアクセスしにくいカンボジア人の金融包摂だ。

ソラミツによると、デジタル化された通貨リエルは現金に代わる取り組みとしてではなく、市中で多く流通しているドル依存を減らしリエルを強化する取り組みと捉えているという。

デジタル化されたリエルは既存の銀行口座に裏打ちされているため、取り付け騒ぎと流動性リスクは最小限に抑えられる。中央銀行によるブロックチェーンを活用したデジタル決済の実用化はバハマに次ぐ先進的な取り組みで、今後もバコンの動きに注目が集まる。

(井上良太)

(カンボジア)

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