RCEP協定署名で貿易相、多国間貿易体制を明確に示すイニシアチブと表明

(シンガポール)

シンガポール発

2020年11月20日

シンガポールのチャン・チュンシン貿易産業相は11月15日、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)協定が15カ国で署名されたことについて、地政学的に重要なイニシアチブとし、さらなる地域経済の統合を推進するものとの談話を公表した。同相は、世界経済が新型コロナウィルスにより影響を受ける中、同協定がその回復において重要な役割を担い、参加国・地域を魅力的な投資先にするだろうと指摘。また、このタイミングでの署名は、参加国による多国間貿易体制への支持とコミットメントを明確に示すものとした(シンガポール貿易産業省)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

シンガポール・ビジネス連盟(SBF)によれば、シンガポールとRCEP協定参加国との貿易額は、過去数年で着実に増加し、2018年には総製品輸出の51%を占めるという。同連盟のホー・メンキット会頭は、シンガポール企業は同協定の累積規定により域内で柔軟な調達ができるほか、減免措置の活用などにより、地域におけるサプライチェーンの多様化を実現することができるとした(同連盟ウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

地元紙「ストレーツ・タイムズ」の社説(11月16日)では、RCEP協定参加国を見渡すと中国・オーストラリア間で貿易摩擦がみられるように地政学的な観点から不確実性が高まる中、ルールに基づいた国際的な枠組みを通じ、特定国が一方的な措置を取ることに対して、抑止になると評価した。また、同紙(11月15日)では、中国人民大学のジェイソン・ジー准教授のコメントとして、同協定発効によって、カンボジア、タイ、ベトナムのGDPと輸出の成長に加え、タイの建設業、シンガポールとマレーシアの加工食品業、ラオスの製造業がメリットを受けると報じた。また、シンガポール社会科学大学のパン・ズンチー講師は、RCEPは複雑なサプライチェーン構築を促進するもので、そのうちベトナムでは、貿易障壁の低減と市場アクセスの強化により、通信、繊維、製靴で恩恵があるとした。

アジア貿易センター所長のデボラ・エルムズ氏は、過去に締結したメガFTA(自由貿易協定)と比較して自由化水準の観点からは野心的ではないものの、同協定が発効すれば、企業はアジアを合理的な最終市場として考え始めるだろう、とコメントした(「ストレーツ・タイムズ」紙11月16日)。

(藤江秀樹)

(シンガポール)

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