在宅勤務普及で2,300万人が都市部からの移住検討
(米国)
ニューヨーク発
2020年11月09日
米国で新型コロナウイルスの影響の長期化が見込まれる中、企業の間では在宅勤務が普及し、主要都市から地方への移住を検討する人が増加傾向にある。
クラウドソーシング企業アップワークの発表(10月29日)によると、米国内では1,400万~2,300万人が都市部からの移住を検討中と推計される(注1)。同社が行ったアンケート調査によると、「新型コロナ禍」で在宅勤務が広がったことにより、6.9~11.5%の世帯が移住を検討している。国勢調査によると、2018~2019年にかけては、全人口の3.6%が他の郡や州に移住していることから、今年移住を検討している人は例年の2~3倍の規模に達することになる。転居を検討する回答者のうち20.6%が主要都市に居住しており、地方への移住が増加する見込み。また、回答者の半数以上(54.7%)は、現在の住居から2時間以上離れた場所に引っ越すと回答した。
都市部から地方への人口流出の動きは、住宅市場のデータでも確認できる。不動産仲介会社レッドフィンが発表(10月28日)した2020年第3四半期(7~9月)のデータ(注2)によると、カリフォルニア州から移住を検討する人は前年同期比62%増の約5万3,000人に達し、同社が移住者の追跡を開始した2017年以来、過去最高水準にある。次いで、ニューヨーク州では、約4万7,000人が州外への移動を検討しており、前年同期の3万5,000人を約34%上回った。その他、マサチューセッツ州やワシントンDCなども州外への移住希望者が多かった。
一方で、約2万2,000人がフロリダ州への移住を検討しており、新規移住者は前年の約2倍に達した。同社のチーフエコノミスト、テイラー・マール氏は、移住者を引きつけるフロリダ州の魅力として、広大なオープンスペースと日光、手頃な住宅価格に加え、州の所得税がないことを理由に挙げ、「新型コロナ禍」で今後も移住者が増加する傾向は強まると述べた。テキサス州、テネシー州、ノースカロライナ州、ネバダ州でも、転出より転入を検討する人が多かった。
前述のアップワークのチーフエコノミスト、アダム・オジメック氏は「遠隔勤務の環境では、組織は有能な人材をその人材がどこに住んでいても探すことができ、企業にとって十分なスキルを持った人材を確保する機会が広がる」と指摘した(「CNBC」10月29日)。
(注1)18歳以上の米国人2万490人を対象としたアンケート調査に基づく。調査実施期間は10月1~15日。
(注2)米国人口の約80%を占める87の大都市圏の住宅を検索した200万人以上のRedfin.com利用者データに基づく。
(樫葉さくら)
(米国)
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