米大統領選を受け、スペインの再エネ、農産品セクターで期待高まる

(スペイン、米国)

マドリード発

2020年11月24日

スペインのペドロ・サンチェス首相は11月7日、米国大統領選挙での民主党候補ジョー・バイデン氏の勝利宣言を受け、「グローバルな重要課題への対処に向けて、米国と協力していけることを期待する」と、ツイッターで祝意を表明した。アランチャ・ゴンサレス・ラヤ外相は6日の国営放送のインタビューで「スペイン産農産品への関税をはじめ、米国との関係をリセットする必要がある」と述べた。

主要各紙も社説でバイデン氏勝利を歓迎。8日付の「エル・パイス」紙は「国民を熱狂させる候補者ではないが、米政権の穏健化と民主主義の尊重、多国間対話への復帰など、時代の転換をもたらす」と評価した。8日付「ABC」紙は「ドナルド・トランプ大統領は既に外交面で重要な実績を残しており、変更の余地は限られる。大統領が欧州に要求していたNATO拠出金拡大の議論は今後も続くだろう」との見方を示した。

スペインの対米通商関係における最優先課題は、米国が2019年10月に発動したエアバス補助金をめぐる対EU報復措置の解決だ。スペインはオリーブ油やワインなどの農産品に25%の追加関税を適用され、大きな打撃を受けた。スペインオリーブオイル輸出協会(ASOLIVA)の幹部は「バイデン氏はあまり保護主義的ではないと期待する。EUのボーイング補助金に対する対米報復関税措置も、米国による報復関税撤廃の交渉材料となりうる」(「エル・パイス」紙10日)と話している。

英国IG証券が9月に公開したレポート「スペイン主要企業への米国大統領選の影響」では、影響が明らかなのはエネルギー企業としている。トランプ政権は化石燃料を重視してきたが、民主党の勝利で脱炭素にかじが切られ、イベルドローラやシーメンス・ガメサなどの再生可能エネルギー企業が恩恵を受ける可能性が高いとしていた。また、バイデン氏による医療保険制度の拡充はグリフォルスなどの製薬企業に追い風となるとした。他方、不利となりうるのは石油産業や、富裕層・企業への増税、規制強化の影響を受ける金融機関としている。

8日付「エクスパンシオン」紙は、政権交代は大手ホテルチェーンのメリア・グループなどにとっても朗報と報じた。トランプ政権は2019年に、キューバ革命後に接収されたキューバ国内の米国民資産に関して、米国の裁判所での損害賠償請求を解禁。これにより接収資産で営業していたスペインの大手が訴訟を起こされるなど、キューバ事業における脅威となっていた(2019年12月11日付地域・分析レポート参照)。

(伊藤裕規子)

(スペイン、米国)

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