「バイデン新政権」に向け、域内の変化に応じた新たな対中東政策を期待

(サウジアラビア、米国)

リヤド発

2020年11月10日

第46代米国大統領にジョー・バイデン氏が選出されたとの報道を受け、11月8日に、サルマン国王は祝電を送り、祝辞を述べるとともに、米国とサウジアラビアの歴史的な友好関係を称賛し、両国で全ての分野において関係を強化、発展させていきたいとした〔11月9日付サウジアラビア国営通信(SPA)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます〕。それ以外のサウジアラビア政府からの公式なコメントは発表されていない。当地各紙は、外電を引用するかたちでバイデン氏の勝利の様子を伝えている。

幾つかの報道では、新政権には、前バラク・オバマ民主党政権とは異なり、現在の地域の変化に応じた中東政策が必要としている。8日付のアラビア語紙「オカーズ」は、「オバマ政権時代以降、アラブの春をはじめ、中東地域では大きな変化が起きている。(民主党政権時代の対イラン政策をみると、新政権にとって)対イラン核開発問題はチャレンジング。他方で、トランプ政権と湾岸アラブ諸国の良好な関係性ゆえに、(米国と対立するイランとの関係を維持する)カタールと湾岸アラブ諸国の関係改善が妨げられていた。イスラエルと複数のアラブ諸国の和平協定も既に動き始めており、今後もこの流れが継続する可能性はある」としている。

また、11月8日付の在ロンドンのアラビア語紙「アッシャルクルアウサト」も、「中東域内が変化しつつある中で、バイデン次期政権はオバマ政権の再来にはなり得ない。特に、テロ組織を支援するイランに対する政策はアラブ諸国にとって最重要課題。また、ムスリム同胞団やテロや暴力行為を行う団体(イスラム過激派)への政策も新政権にとって、いばらの道となる」とした。

同様の見方は、現地英字紙「アラブ・ニュース」(10月26日)が発表した、中東・北アフリカ(MENA)18カ国で実施された世論調査(注)にも表れた。同調査では、回答者の40%がバイデン氏の方が良いと答え、12%がトランプ氏の方が良いと答えたが、バイデン氏はオバマ政権時代からは距離を置くべきとした。また、トランプ氏による経済制裁を含む対イラン強硬姿勢や、対イエメン戦争は評価するものの、米国大使館のエルサレムへの移設には89%が反対と答えた。トランプ政権による核合意離脱や、イスラエルのヨルダン川西岸の入植地建設拡大に明確に反対しなかった姿勢も同氏の低評価につながるなど、中東地域が抱える課題に対する米政権への期待は複雑に絡み合っている。

(注)アラブ・ニュースおよび英国調査会社YouGovによる共同調査。3,097人を対象にMENA18カ国で実施。

(柴田美穂)

(サウジアラビア、米国)

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