対中強硬姿勢は続くと懸念、米大統領選の結果による広東省企業への影響

(中国、米国)

広州発

2020年11月12日

米国大統領選挙で民主党候補のジョー・バイデン前副大統領が11月7日に勝利宣言をしたが(2020年11月9日記事参照)、トランプ大統領は法廷闘争を続ける姿勢を見せており、今後の行方は予断を許さない。中国国内では、バイデン政権誕生、トランプ政権続投のいずれにしても、米国の対中強硬姿勢は続くとの見方が多い。広東省の主要産業への影響について、有識者のコメントを中心に紹介する。

バイデン政権が誕生しても、中国に対する強硬姿勢は続くとみられる。民間シンクタンクの恒大研究院の関係者は「トランプ大統領と比べてバイデン氏の対中政策は温和だったが、2019年6月以降、徐々に強硬に転じた。2020年7月21日に発表された民主党の綱領では『対中政策で自滅的な関税戦争や新冷戦のわなに落ちることはないが、中国の知的財産権侵害など不公正な貿易慣行から米国を守り、同盟諸国との関係を強化しながら中国政府に強く立ち向かう』と主張しているので、どちらが当選しても、強硬な対中政策が継続する」との懸念を示している。また「議会レベルでは、民主・共和両党の議員の対中認識は一致しており、中国関連法案や政策は派閥を超えた共同発議により満場一致で可決したものが多い。議会選での両党候補の議席獲得数をもって米国の対中政策の方向性を変えることは難しい」と述べた。

輸出管理強化と産業戦略への影響あり

広東省は中国最大の半導体・集積回路市場を有しており、2019年の集積回路産業の売上高は1,200億元(約1兆9,200億円、1元=約16円)超となった。2020年9月には広東省の発展改革委員会など3部門が連名で、省内の半導体と集積回路の企業の成長を促すため、「広東省の半導体および集積回路産業の育成に向けた行動計画(2021~2025年)」を発表した。2025年までに年間売上高を4,000億元超、年平均成長率を20%超とする目標を掲げている。そのような華南地域にとって、米国の輸出管理強化の影響は大きいとみられている。広東省の政府系シンクタンク関係者によると、広東省の集積回路の輸入額は全国の40%を占めており、米国の輸出管理政策がより厳しくなれば、広東省の半導体産業へのインパクトは大きいという。

また、広東省の輸出額は全国の約4分の1を占めており、中国の貿易管理措置の影響も受ける。在広州法律事務所の弁護士は「中国の輸出管理法が 2020年12月1日から施行される。米国の貿易管理措置への対抗策とみなされ、特定の材料や技術を輸出する際、事前に輸出先や用途を政府へ申請し、許可を得なければならない。実施状況は米国の対中政策次第であり、輸出依存度の高い華南地域では企業の関心が高まっている」と指摘した。

広東省の自動車産業にも、米国の実施する環境関連政策が影響する可能性があるという。在広州法律事務所の弁護士によると、トランプ大統領とバイデン氏の選挙綱要における税収や気候変動、エネルギーに関する政策には大きな違いがあり、企業の新エネルギー車投資戦略もそれに合わせて再検討が必要ではないかという。

(盧真)

(中国、米国)

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