中国、RCEPにより内需振興や企業の競争力強化などを期待

(中国、ASEAN、日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランド)

北京発

2020年11月25日

中国の鐘山商務部長は11月15日、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)協定(以下、協定)に署名した。李克強首相は、協定への署名について「東アジア地域における協力の象徴的な成果であるだけでなく、多国間主義や自由貿易の勝利でもある」と高く評価した。

商務部国際司の担当者は、RCEP署名の意義について、中国が開放型新経済体制を構築し、国内大循環を主体とし、国内・国際の双循環を相互に促進する新たな発展局面を形成する大きな助けとなること、RCEPが中国の対外開放拡大の重要なプラットフォームになること、などを挙げたほか、協定が東アジア地域における経済一体化レベルの引き上げや産業チェーン、サプライチェーン、バリューチェーンの融合促進に寄与するとした。

北京大学国家発展研究院の余淼杰教授は、協定が中国経済に与える影響について、原材料の輸入価格低下により企業の生産コストが引き下げられること、消費財の輸入価格低下により国内製品の価格も下がり、内需振興につながること、最終財の輸入増加により、国内関連産業の競争が活発化し、中国企業の競争力強化につながること、などを指摘した(「財経」11月17日)。また、対外経済貿易大学中国WTO研究院の屠新泉院長は、協定が中国の国内改革やビジネス環境改善を促進させると期待を示した(同)。

サプライチェーンに対する、ポジティブな影響を論じる見方もある。商務部国際貿易経済合作研究院の白明副所長は、協定が東アジア域内における中国の産業チェーンやサプライチェーンをより完全なものとし、安定したサプライチェーンが中国経済の安定的で持続的な発展にとって大きな外部動力源となると述べた(「財経」11月17日、注)。さらに屠院長は、協定の署名・発効は東アジア地域内および国家間の産業移転を促進し、地域内の分業・協力を深化させ、周辺や域外市場に対して正のスピルオーバー効果を生み、国境を越えた投資や産業内貿易の増加をもたらすとも指摘している(「新華社」11月17日)。

(注)商務部国際貿易経済合作研究院アジア研究所の袁波副所長は、RCEP協定では統一された貿易投資ルールを採用しているため、中国を含む各国の企業は域内においてサプライチェーンや産業チェーンの配置を効率化できるとしている(「第一財経日報」11月15日)。また、中国社会科学院APEC・東アジア協力研究センターの沈銘輝秘書長は、RCEP協定では原産地規則や貿易円滑化について大きな変更がされており、これが地域全体のサプライチェーンの安定維持に対して大きく寄与すると指摘している(同)。

(小宮昇平)

(中国、ASEAN、日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランド)

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