ロシア版車検証、電子版のみの発行に切り替え

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2020年11月06日

ロシアでは11月1日、日本の車検証に相当する車両パスポート(以下、PTS)の発行を電子版のみに切り替えた。「電子版PTS」(以下、EPTS)の導入により、修理や保全、保険履歴をはじめとする車両情報が電子的に蓄積されるため、中古車売買での透明性向上に寄与するとみられている。

PTSに記載される情報は車両識別番号(VIN)、メーカー、ブランド、モデル、車両カテゴリー、製造年、エンジンの型式・番号・シリンダー容量、車体の色、最大積載重量、車体重量など。国産車の場合は生産工場で、輸入車は税関で発行される。EPTSはこれらに加え、検査・保守・修理、強制・任意保険、保険使用歴、銀行やリース会社による売買制限事項、リサイクル税支払いや通関申告書番号など、行政管理に必要な100項目以上の情報が盛り込まれる。EPTSは2016年7月に導入され、これまでに140万件以上発行されている。

電子化への移行は2015年9月22日付ユーラシア経済委員会理事会決定第122号と、2019年2月20日付連邦政府決定第166号に基づくもので、11月1日以降、国産車、輸入車ともにEPTSのみ発行される。紙版PTSの新規発行は行われなくなるが、既に発行済みのものは引き続き有効。紙版PTSをEPTSに切り替えることは可能だ。

EPTSに情報を追加する作業は交通警察や税関、税務署といった行政機関のほか、ディーラーや認証機関、技術検査場、保険会社などが行う。追加された情報は削除することができない。これにより検査や修理、納税、罰金支払いといった履歴を電子的に閲覧することが可能となる。

EPTSのメリットは文書の紛失がなくなること、生産・輸入から輸出・廃棄に至る全ての経歴をトレースできることなどが挙げられているが、とりわけ、検査・修理・保守作業や保険使用履歴が明らかになるため、中古車売買の透明性向上に寄与するとみられている。中古車購入に伴う相談や支援を行っているヘルプ・バイ・オートのオーナーであるパベル・ブジャコ氏は「中古車売買の透明性が高まり、市場から悪意のある業者の排除につながる」と評価している(自動車専門メディア「オートニュース」11月5日)。

(齋藤寛)

(ロシア)

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