2021年予算案、新型コロナ対策、国民福祉、経済活性化に重点

(マレーシア)

クアラルンプール発

2020年11月12日

マレーシアのザフルル・アジズ財務相は11月6日、2021年予算案を発表した。一般歳出が前年比4.3%増の2,365億リンギ(約5兆9,125億円、1リンギ=約25円)、開発支出が38.0%増の690億リンギだった(添付資料表参照)。歳出合計は、2020年政府財政(新型コロナウイルス)特別措置法の下で設置された特別信託基金分の170億リンギを加え、GDPの20.5%にあたる3,225億リンギと、過去最大規模となった。歳入は4.2%増の2,369億リンギで、財政赤字のGDP比は5.4%を見込む。

新型コロナウイルス対策や国民の福祉に力点

2021年予算案では、(1)国民の福利厚生、(2)ビジネスの継続性、(3)経済の強靭(きょうじん)性の3つの目標を掲げ、新型コロナウイルスで打撃を受けた社会と経済の活性化に焦点を当てた。新しい税制の導入はなく、特に、検査能力の向上やワクチン確保など新型コロナウイルス対策への予算充当のほか、個人所得税や社会保障負担率の引き下げ、低所得者向けの支援金の増額など、生活負担の軽減策が目立った。また、失業率上昇による雇用環境の悪化に鑑み、6月に発表した短期経済回復計画(PENJANA)で導入した、若者や失業者の採用に対する補助金の拡充などの雇用促進を目的とした施策を盛り込んだ(2020年6月11日記事参照)。

地域統括拠点や生産移管のインセンティブ延長

投資の促進に関する施策では、既存の投資インセンティブの条件緩和や申請期間の延長のほか、航空機器や電気機器などの研究開発や高度技術の導入に対するファンド創設などが発表された。2015年に導入された地域統括拠点向けのインセンティブで、最大10年の法人税減免が受けられるプリンシパル・ハブ・インセンティブは2020年末までの申請期間を2年間延長したほか、後の5年間の優遇を受けるための条件が緩和される。また、グローバルトレードセンターという制度を新設し、貿易活動を行う地域統括拠点に対して、プリンシパル・ハブとは別の条件での法人税減税措置を設ける。また、ワクチンを含む医薬品を製造する企業に対する法人税減税措置も新設される。

そのほか、PRNJANAで導入した生産拠点移管に対するインセンティブは、製造業だけでなく、製造業に関連するITや研究開発などのサービス業にも拡大した。地場中小企業を対象とした自動化・デジタル化も引き続き重点目標とし、自動化・デジタル化を補助する補助スキームへの追加資金が充当された。

経済強靭化の一環として、2021年初頭に発表予定の新たな国家5か年計画である「第12次マレーシア計画」下で取り組む大型インフラ開発案件も発表した。計画が凍結されていたクアラルンプール~シンガポール間高速鉄道(HSR)やクアラルンプール市内の大量輸送システム(MRT)3号線が続行となった。

予算案は12月10日まで国会で審議される。

(田中麻理)

(マレーシア)

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