欧州中銀、現行の金融政策を維持するも12月に追加緩和を検討へ
(ユーロ圏、EU)
デュッセルドルフ発
2020年11月02日
欧州中央銀行(ECB)は10月29日、ドイツ・フランクフルトで開催した政策理事会後の記者会見で、主要政策金利を据え置くとともに、「新型コロナ危機」への現行の対策を維持する方針を発表した。
政策金利(主要リファイナンス・オペ金利)を0.00%、限界貸付ファシリティー金利(オーバーナイト貸し出し、翌日返済)を0.25%、預金ファシリティー金利をマイナス0.50%にそれぞれ据え置く。また「新型コロナ禍」での緊急対策として打ち出した資産購入プログラム「パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)」については、1兆3,500億ユーロの規模で2021年6月末まで継続する姿勢を維持した。PEPPを通じて購入し保有する債券・国債の再投資も引き続き、少なくとも2022年末まで継続するとした。
ユーロシステムによる債券・国債の購入プログラム(APP:asset purchase programme)についても、月額200億ユーロ規模での購入を継続するほか、1,200億ユーロの一時的な追加資産購入を12月末まで継続。緩和政策の効果を高めるため、資産購入については「必要な限り」金利の引き上げ開始前まで継続するとし、APPの下で購入し保有する債券・国債の再投資は、主要政策金利の引き上げ開始以降も必要な限り続ける従前の方針をあらためて示した。2019年9月に開始した貸し出し条件付き長期資金供給オペレーション(TLTRO-III:Targeted longer-term refinancing operations)も継続する。
12月の経済予測を基に、政策手段の再調整も
一方、クリスティーヌ・ラガルドECB総裁は、リスクが明らかな下振れ傾向にある環境下で、ECBとして今後の新型コロナウイルス感染拡大の経過やワクチンの準備状況、為替レートの変動といった情報を注意深く評価していくと指摘。12月に発表するECBスタッフマクロ経済予測を基に今後の経済見通しやリスクの均衡を評価し、状況に応じたあらゆる適切な政策手段を再調整すると強調した。
ラガルド総裁はユーロ圏の経済回復について、「部分的かつ不均一ではあったものの、夏季に見られた強い経済回復は、そのペースが予想より早く減速している」と分析した上で、新型コロナウイルスの新たな感染拡大とそれに伴う封じ込対策が経済活動を圧迫し、短期の経済見通しを悪化させるとの認識を示している。
(ベアナデット・マイヤー、森悠介)
(ユーロ圏、EU)
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