米大統領選を受け、ドイツ政財界は気候変動対策や貿易政策に期待

(ドイツ、米国)

ベルリン発

2020年11月10日

ドイツでは、米国大統領選挙において民主党候補のジョー・バイデン前副大統領の勝利が確実となったことを受け、各方面から歓迎のコメントが相次いだ。

アンゲラ・メルケル首相は11月9日、バイデン氏および副大統領候補のカマラ・ハリス両氏に祝意を述べるとともに、「米国とEUの構成員としてのドイツは、私たちの時代の大きな諸課題に対処するために協力しなければならない」と述べ、次期米国政権との連携に期待を表明した。

ハイコ・マース外相は同日、「中国といった影響力の大きい国(との関係)、気候保護、新型コロナウイルス危機への対処といった課題に対し、大西洋間のコミュニティーとしての団結に関する具体的な提案を行う準備がある」として、早期の政策対話に対し期待を表明した。また、ペーター・アルトマイヤー経済・エネルギー相は、ドイチェランドフンク(ドイツ公共ラジオ放送局)のインタビューに対し、「気候変動対策を大きく前進させるチャンス」として、米国のパリ協定復帰に期待を寄せるとともに、冷え込んでいる通商関係についても「多国間主義に回帰し、一方的な行動は減るだろう」との見通しを示した。

産業界からは、ドイツ産業連合(BDI)が同日声明を発表し、過去4年間で欧州と米国のパートナーシップは困難な状況に陥っており、「新型コロナ危機」によって悪化している国際安全保障、気候保護、デジタル化といった主要な課題について、EUと米国による協調の必要性を強調した。また、WTO事務局長選挙への建設的な参加やエアバスおよびボーイングの補助金をめぐる対立といった具体的な課題への早期解決に期待を寄せた。

バイデン氏の勝利確実は、ドイツ政財界においておおむね好感されているものの、一部の専門家は過度の楽観視に対して警鐘を鳴らしている。

ドイツ経済研究所(DIW)のマルセル・フラッチャー所長は「バイデン氏およびハリス氏の主な焦点は、深く分裂した国内を団結させ、対立を和らげることで、このため今後4年間は主に国内政治に目を向ける可能性が高く」とし、また貿易政策に関しては「米国での雇用回復と労働者の収入増を期待して、中国や欧州との対立関係を継続する可能性がある」と指摘した。

また、方向性の一致が期待される気候変動対策について、「シュピーゲル」誌は11月8日付で、「パリ協定への復帰はバイデン政権の取りかかる第一歩になるだろうが、復帰のためには、温室効果ガス排出削減に関する向こう数年の中間目標(NDC)の提出が必要となる」ものの、この提出に当たっては米国議会の承認を必要とするため、共和党が議会で多数派になった場合、共和党を説得できない限り「大きな気候変動目標が実現する可能性は低いだろう」との懸念を掲載した。

(田中将吾)

(ドイツ、米国)

ビジネス短信 04ed2fb47fe84436