次期5カ年規画と2035年までの長期目標の骨子発表、1人当たりGDPベースで中レベル先進国入りを目指す

(中国)

北京発

2020年11月06日

中国共産党第19期中央委員会第5回総会(五中全会)が10月26日~29日に開催され、今後の中国の経済社会発展の方向性を定める第14次5カ年規画(14・5規画、2021~2025年)と、2035年までの長期目標に関する提案が審議・採択された。29日に発表された五中全会のコミュニケ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでは、新型コロナウイルスなどを踏まえた国際情勢に対する認識、第13次5カ年規画(2016~2020年)の目標達成状況の評価、中国の発展の現状と課題、2035年に社会主義現代化を基本的に実現するための長期目標(注1)、14・5規画における原則や同期間における経済社会発展の主要目標などが示された。

コミュニケでは、現在および今後の一時期は、中国の発展にとって重要な戦略的チャンスの時期とする一方、国際環境はより複雑化し、不安定性や不確実性が顕著に高まっているとの認識を示した。また、発展の不均衡・不十分という課題が突出しており、重点分野のコア領域の改革の取り組みが依然困難だとした(注2)。

このような認識の下、2035年までの長期目標として、経済力、科学技術力、総合国力を大幅に引き上げ、経済規模と都市・農村の住民の1人当たり所得を新たなレベルに引き上げること、コア技術において大きなブレークスルーを実現すること、イノベーション型国家の上位に入ること、などを掲げた。気候変動分野については、炭素排出量をピークアウト後、安定的に引き下げると具体的に記述した。また、1人当たりGDPを中レベルの先進国の水準に到達させ、中間所得層を顕著に拡大するとして、2021年以降の所得水準引き上げの目標を示した(注3)。

14・5規画の指導思想・原則については、サプライサイド構造改革の深化をメインとし、改革・イノベーションを根本的な動力とするほか、国内の大循環を主体とする、国内と国際の2つの循環(双循環)が相互に促進する新たな発展局面の構築を加速することが盛り込まれた(注4)。

14・5規画の主要目標については、イノベーションを筆頭に、産業・経済のグレードアップ、内需拡大、改革の深化、農業・農村の発展、地域の発展や新型都市化、文化、環境、対外開放、人民の生活、発展と安全、国防などの分野における今後の方向性が示された(注5、2020年11月6日記事参照)。

(注1)2017年10月に開催された中国共産党第19回党大会において、2035年までに社会主義現代化を基本的に実現し、2000年代半ばまでに「社会主義現代化強国」を実現するという目標が打ち出されていた。

(注2)コミュニケでは、中国の発展が直面している具体的な課題として、イノベーション能力が質の高い発展の要求に見合っていないこと、農業の基盤が固まっていないこと、都市と農村における収入・分配面の格差が拡大していること、生態環境保護の取り組みが道半ばなこと、民生の保障に足りない点が存在すること、社会の統治に依然弱点があることを列挙している。

(注3)2012年11月に開催された中国共産党第18回党大会では、2020年の国民の1人当たりの収入を2010年比で2倍にするという目標が打ち出されていた。今回のコミュニケにおいては、2020年までの倍増目標の達成状況については直接言及せず、「2020年にGDPが100兆元(約1,500兆円、1元=約15円)を突破する見込み」とした。

(注4)10月30日に行われた五中全会に関する記者会見において、党中央財経委員会の韓文秀副主任は、世界で保護主義が台頭し、新型コロナウイルスが大きな影響を与えている中で、従来の国際経済循環は弱体化し、疎外されており、国内経済の大循環を強化することによって経済発展の強靭(きょうじん)性を高め、ひいては国際経済循環も促進することができる、との見方を示した。また、中国のGDP成長に占める内需の寄与率が90%以上を占めていることから、国内大循環を主体とすることは、共産党が経済発展の客観的ルールを正確に把握し、実践・運用していることを示すものだ、と説明した。

(注5)国家発展改革委員会の寧吉喆副主任は、今後は同委員会が、今回打ち出された方針の下で14・5規画の策定作業に取り組み、数値目標などを盛り込んだ規画綱要を、2021年の全国人民代表大会に上程すると述べた。

(小宮昇平)

(中国)

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