欧州委、英国に離脱協定履行と「国内市場法」案修正をあらためて要請

(EU、英国)

ブリュッセル発

2020年10月05日

欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は10月1日、「英国国内市場法」案(2020年9月11日記事参照)が英国のEU離脱協定と北アイルランド議定書に違反するとして、英国に対する義務不履行手続きに着手したことを表明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。欧州委は9月末までの同法案修正を求めていたが、英国はこれに応じなかった。義務不履行手続きの第1段階として欧州委は同日、英国に公式通知状を送付し、英国政府に対して10月末までに見解の表明を求めた。問題の解決がみられない場合、同手続きは司法的段階に進む可能性がある。

フォン・デア・ライエン委員長は10月2日、特別欧州理事会(2020年10月6日記事参照)後のプレス会見で、英国に対し離脱協定の履行とともに、EU・英国間の将来関係協議の「時間切れが近づく」中で協議の「強度を高める」よう求めていくと述べた。

同委員長は翌3日には、将来関係協議の進捗状況に関して、ボリス・ジョンソン英首相とビデオ会議形式で会談した。会談後の共同声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでは「可能であれば合意を見いだすことの重要性」について同意し、「意見の相違を克服すべく、インテンシブに取り組むよう、それぞれの首席交渉官に指示した」と言及したのみで、今後の方向性について踏み込んだ発表はなかった。

将来関係協議の第9ラウンドは打開策なく事務的に進行

また、9月29日~10月2日にかけて、将来関係協議の第9ラウンドがブリュッセルで開催され、欧州委のEU英国将来関係タスクフォースのミシェル・バルニエ代表は協議を終えて2日に声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。収束(convergence)の見られる論点として同代表は、物品貿易、サービスおよび投資、民間の原子力協力、EUの各種プログラムへの英国の参加を挙げた。また、航空安全や社会保障、警察・司法協力などの分野で進展があったとした。交渉の遅れている分野としては、個人情報の保護、気候変動、カーボン・プライシングなどが挙げたほか、国家補助など「公平な競争条件」や、紛争解決など両者間のガバナンス、漁業といった過去の協議ラウンドから指摘されてきた重要論点については、依然として「根深い重大な相違」があると表現し、現状打開に至っていないことがうかがわれた。

(安田啓)

(EU、英国)

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