9月の消費者物価指数、前年同月比上昇率は低水準続く

(インドネシア)

ジャカルタ発

2020年10月09日

インドネシア中央統計庁(BPS)は10月1日、2020年9月の消費者物価指数を発表した。9月は前年同月比1.42%上昇となり、2020年2月以降で初めて前月の上昇幅を上回ったものの、低水準が続いている(添付資料図参照)。中央銀行の目標インフレ率2~4%を、4カ月連続で下回っている状況だ。

主要品目別にみると、輸送(前年同月比0.72%減)、情報・通信・金融サービス(0.42%減)が、前月に引き続き低下した。他方、物価上昇率が高かった品目は、パーソナルケア・その他サービス(6.97%)で、以下、医療(3.24%)、レストラン(2.37%)、食品・飲料・たばこ(1.78%)、家庭用の設備・物品・定期メンテナンス(1.50%)の順となった。

第3四半期を通して前月比はマイナスに

9月の消費者物価指数の前月比では0.05%減と、7月、8月に引き続きマイナスを記録した。主要品目別では、11品目のうち、食品・飲料・たばこ(0.37%減)、輸送(0.33%減)、衣類・履物(0.01%減)、情報・通信・金融サービス(0.01%減)が減少となった。特に、鶏肉、卵などの食品の価格下落が、物価下落の大きな要因になった。他の項目は、1%未満ながら前月比で上昇した。特に、調査対象都市のうち19都市で大学の授業料が上昇したことにより、教育分野は0.62%の上昇となり、全体の物価下落を押しとどめた(CNBC Indonesia10月5日)。

地域別でみると、調査対象の90都市のうち56都市で低下し、34都市で上昇した。最も物価が下落した都市はパプア州のティミカ(0.83%減)だった。一方、物価上昇率が最も高かったのは北スマトラ州のグヌンシトリ(1.00%上昇)だ。

BPS長官のスハリヤント氏は「需要が低くとどまっていることから、食品や輸送の価格下落が続いている。パンデミックの影響で人々の購買力は依然回復しないままだ」とした(CNBC Indonesia10月3日)。

人々の購買力が回復せず、買い控えの傾向があることについての報道も出ている。経済紙「ビスニス・インドネシア」の電子版によると、預金保険公社が発表している銀行の表面預金(注)額は2020年7月からの1カ月間で175兆ルピア(約1兆2,425億円、1ルピア=約0.0071円)増加し、50億ルピアを超える預金はこれまでで最も増加した。経済開発センター(CORE)エコノミストのピター・アブドゥラー氏は、預金金利が低いにもかかわらず今後も預金を続ける人が多いと予想した上で、「今後の経済の見通しが立たないことから、人々は貯蓄するしかない。政府の支出も、社会全体の消費を押し上げるにはいまだ不十分だ」との見方を示した(ビスニスドットコム10月3日)。

(注)金融機関の勘定上の預金、すなわち預金者が持ち込んだ現金や他店払い手形・小切手を含む預金全体を指す。

(デシー・トリスナワティ、尾崎航)

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