政治の流動化続くも、中小企業活動は正常化へ

(キルギス)

タシケント発

2020年10月14日

中央アジアのキルギスでは、10月4日に行われた選挙結果をめぐり政治の混乱(2020年10月8日記事参照)が続いている一方、日常生活・企業活動は平常に戻りつつある。

ソオロンバイ・ジェエンベコフ大統領の所在は13日時点で、首都ビシュケク市内にいることを除いて明確にされていない。新首相と目されたサディル・ジャパロフ氏については、首相就任手続に瑕疵(かし)があり、EUが法的正当性を認めない声明を発表した。ビシュケクを中心とする北部地域での政権争い、キルギス第2の都市オシを中心とする南部地域ではウズベク族との民族対立などもあり、事態は複雑で政党・有力者間の調整にも見通しがついていない状況だ。

一方、企業活動は徐々に正常化しつつある。政治的な対立が先鋭化した6日以降、首都の治安が一時的に混乱したが、9日には夜間外出を禁じた非常事態宣言が出され、ビシュケク中心部に軍隊が出動。現時点で市内の治安は回復している。

この混乱に乗じた犯罪行為を防止するため、キルギス中央銀行は市中銀行が保有するATMや、SWIFTによる国際送金業務の一時停止を指示。しかし、治安の回復を受けて13日からSWIFT経由の国際送受金業務を一部再開させている。

日本を含む諸外国へ蜂蜜を輸出する在ビシュケクの地元企業はジェトロのヒアリングに対し、「混乱した先週は10月7日から9日までオフィスを閉めたが、12日から業務を再開した。ビシュケク市外での蜂蜜の収穫作業は継続して行っていた。国内の銀行送受金については問題ない」と述べ、ビジネスは2、3日で平常に戻るとの見方を示した。また、「今回の政争は前回2010年のものより企業活動への影響は少なく、新型コロナウイルスによる影響の方がはるかに大きい」と述べた。

ただし、今回の混乱の影響は新型コロナウイルス感染症の拡大で苦しむキルギスの財政にさらなる打撃を与える可能性がある。ビシュケクのアジズ・スラクマトフ市長は12日、新型コロナウイルスによる経済活動の縮小で市の予算不足が10億ソム(約13億2,000万円、1ソム=約1.32円)に達したとコメント。経済活動が元に戻らない限り不足額は一層拡大する見通しを示した。

混乱に乗じ、キルギスの主力産業である金の鉱業関連施設などが正体不明の武装集団に襲われる事件などが発生している。地方の情勢安定や施設稼働再開までの時間が長引けば、税収・輸出が減少し、財政・国際収支ポジションのさらなる悪化が想定される。

(高橋淳)

(キルギス)

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