かどや製油、EPAを追い風にごま油の輸出拡大
(米国、カナダ、インドネシア、フィリピン、タイ)
米州課
2020年10月21日
ごま油や食品ごまの製造・販売を手掛けるかどや製油(本社:東京都品川区)は、ごま製品を世界30カ国以上に輸出している。近年はイスラム圏向けにごま油のハラール認証を取得するなど、日本とは食文化が異なる地域へも輸出拡大を図る。欧米やアジアへの輸出では、経済連携協定(EPA)や自由貿易協定(FTA)の利用にも積極的だ。同社海外営業部の北河智彦部長と湯前博之副部長に、EPA、FTAの活用状況やそのメリットについて話を聞いた(8月12日)。
かどや製油は、輸出事業を始めて約50年が経つ。最初の輸出相手国は米国で、今でも最大の輸出先だ。EPAに関しては、現在はインドネシアやフィリピン、タイへの輸出で2国間EPAを利用するほか、カナダ向けに環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP、いわゆるTPP11)、EU向けに日EU・EPAと、幅広く活用している。
TPP11と日EU・EPAは発効後、現地ディストリビューターからの求めに応じて、すぐに利用を開始した。TPP11発効により、カナダ向けのごま油は11%あった関税が撤廃された。関税削減の直接のメリットは現地輸入者側に帰属するが、湯前氏は関税削減の効果について「現地での価格競争が厳しい中、商品の競争力向上につながっている。実際に2019年度の輸出数量は伸びた。EPA活用による具体的な押し上げ効果は図れないものの、追い風になった」と話す。
TPP11、日EU・EPA利用に伴う書類作成などは、全て内製化している。手続きのための情報収集に当たっては、経済産業省やジェトロが公開している資料も読み込んだという。両協定で原産地証明制度として採用されている自己申告制度は、第三者証明にかかる手間がなくなることからEPA利用を後押しする要因になっている。今後も同制度を利用できるEPAが広がることに期待を示す。人員体制については、輸出手続きにはある程度のノウハウが必要であることから人材の定着を図っているといい、将来の人員増強も視野に入れ、腰を据えてEPA活用に臨む方針だ。
(甲斐野裕之)
(米国、カナダ、インドネシア、フィリピン、タイ)
ビジネス短信 d3a26ca334a86349