北キプロス大統領選挙、独立派のタタル氏が当選

(北キプロス、トルコ)

イスタンブール発

2020年10月23日

北キプロス・トルコ共和国(以下、北キプロス)(注)で10月18日に行われた大統領選挙の決選投票で、エルシン・タタル氏が現職のムスタファ・アクンジュ氏を破って当選した。

同月11日に行われた大統領選挙では、当選に必要な得票率50%を超える候補者がなく、上位2者による決選投票となっていた。トルコの国営アナドル通信(10月18日付)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、決選投票の投票率は67.29%で、登録有権者数19万9,000人のうち13万3,931人が投票した。結果は右派・国民統一党(UBP)のタタル氏の得票率が51.69%、左派・共同民主党(TDP)のアクンジュ氏は48.31%だった。

1973~1974年のキプロス紛争以降、北キプロスの独立を牽引した故デンクタシュ初代大統領の意思を受け継ぐとされるタタル氏はトルコ政府に近いとされ、アクンジュ陣営は「トルコ政府によるかつてない介入があった」と批判した。キプロス島の南北分断問題は未解決だが、ギリシャ系住民が多数を占めるキプロス共和国(南キプロス)は2004年に単独でEU加盟を実現。北キプロスでも、国連の仲介と南キプロスとの統一による経済発展に期待する声も聞かれ、独立維持にこだわるUBPへの支持は低迷していた。しかし、長期にわたって南北対話に進捗が見られなかったことで、巻き返した。

連邦制によるキプロス統一に一定の理解を示すアクンジュ氏が去り、主権を有する実質的な独立を支持するタタル氏が勝利したことで、キプロス統一が遠のいたとする声も出ている。また、東地中海の地域問題としても、欧米の報道では、今回の選挙結果は北キプロスとトルコが主張する東地中海の領海問題や資源開発問題にも影響し、EU加盟国ギリシャや南キプロスとの対立の激化を懸念する向きもある。

タタル氏は大統領選後の記者会見で「ギリシャ人とキプロス島のギリシャ系の友人たちが島の経済的、戦略的、社会的な現実を認めるのであれば、問題の解決は簡単だと思う。しかし、妥協しない姿勢を取り続ける場合、彼らは、われわれが権利を放棄しないことを知るだろう」と述べた。

タタル次期大統領は2009~2013年に財務相、2018年10月31日以降は与党・国民統一党(UBP)党首として首相を務めていた。

(注)北キプロス・トルコ共和国は、トルコのみが国家承認している。日本を含めて国際的には未承認。トルコからは経済的支援などを受けている。

(中島敏博)

(北キプロス、トルコ)

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