スーダンがイスラエルとの国交正常化に合意、米国のテロ支援国家指定も解除の方針

(スーダン、イスラエル、米国)

カイロ発

2020年10月26日

米国のドナルド・トランプ大統領は10月23日、米国の仲介により、イスラエルとスーダンが国交正常化に合意したことを公表した(ホワイトハウス外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。両国は、農業、貿易分野での協力や航空便就航を目指すとの共同声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを出している。正式にはスーダン議会の承認が必要だが、アラブ諸国では、エジプト、ヨルダン、アラブ首長国連邦(UAE)、バーレーンに次いで、5カ国目のイスラエルとの国交正常化となる見込みだ。

スーダン市民の間では国交正常化に対する反発の声もあるが、スーダン暫定政府としては、国交正常化の代わりに経済支援や米国によるテロ支援国家指定の解除を求めるかたちとなった。2020年に入り、新型コロナウイルスの感染拡大、洪水、物価高騰などの影響で、社会・経済が危機に陥っていることが背景にある。昨今の通貨スーダン・ポンドの急落により、輸入に依存する食品や燃料の価格が高騰し、市民の生活を圧迫しており、暫定政府による経済対策の不足に反発が出ている(2020年9月23日記事参照)。IMFの10月の発表によると、2020年の消費者物価上昇率は141.6%、2021年も129.7%と、物価の大幅な上昇が予測される。

経済をみると、IMFは2020年のスーダンの成長率をマイナス8.4%と、大幅な落ち込みを予測している。2021年は0.8%とプラス成長に転じる見込みだが、経済立て直しのためには、米国や欧州諸国、国際機関の支援が必要とされている。2020年10月26日付の現地報道によれば、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は国交正常化の合意を受け、早速500万ドルの食糧支援を公表した。

米国によるテロ支援国家指定の解除については、トランプ大統領が指定を正式に取り消す意向を米国議会に通知した。解除の条件となる、米国大使館爆破事件への3億3,500万ドルの賠償は、ホワイトハウス外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによるとスーダン側が支払い手続きを完了したという。1993年以来27年ぶりにテロ支援国家指定が解除されれば、米国や欧州などの海外企業からの投資の増加が見込まれる。スーダンの人口は世界で約35位、アフリカでは10位程度の約4,435万人と多く、ビジネスの機会が広がる可能性がある。

(井澤壌士)

(スーダン、イスラエル、米国)

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