菅首相が初の外遊先としてベトナムを訪問、首脳会談で連携強化に合意

(ベトナム、日本)

ハノイ発

2020年10月22日

菅義偉首相は10月18日から20日にかけて、就任後初の外遊先となるベトナムを訪問した。19日午前にはハノイ市内の首相府で、グエン・スアン・フック首相と会談した。

ベトナム政府の発表によると、首脳会談では国防・安全保障、新型コロナウイルス対策、経済などにおける協力促進について協議した。国防・安全保障面では、南シナ海や朝鮮半島など地域の課題について意見を交わしたほか、防衛装備品・技術の移転を促進していくことで実質合意した。

新型コロナウイルス対策での連携も強化し、短期出張者を対象とした往来や、定期旅客便の運航を再開する方針で合意した(注)。新型コロナウイルスの影響を受け、帰国できずに日本国内で生活に困窮するベトナム人の技能実習生や留学生への支援、日本企業のサプライチェーン多元化の推進をしていくことでも一致した。

経済面では、農産物の市場開放についても協議し、日本産の温州ミカン、ベトナム産のロンガン(竜眼)生果実の輸入規制を緩和していく方針で一致した。

会談後の共同記者発表で菅首相は、ベトナムは2020年のASEAN議長国を務めるなど、(日本が提唱する)「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」を実現する上で重要な役割を担っており、大切なパートナーだと発言。フック首相は、会談を通じて重要な分野について協議でき、双方で政治的信頼を高めることができたと述べた。

日越官民で12件の合意文書

首脳会談に続き、両首相立ち会いの下、日越官民の各プロジェクトに関する文書交換式が行われた。TOTOベトナムが北部ビンフック省から新工場建設にかかる投資登録証明書の交付を受けたほか、環境、エネルギー、インフラ開発協力など合計12件の合意文書が交わされた(添付資料参照)。菅首相は、ホーチミン市の都市鉄道案件を例にあげ、日本は官民でベトナムの経済発展を支え続けると述べた。ベトナム政府は、9月にフック首相と進出日系企業による対話会を実施するなど、日本からの投資拡大に期待している(2020年9月11日記事参照)。

菅首相はベトナム訪問中に、グエン・フー・チョン書記長兼国家主席、グエン・ティ・キム・ガン国会議長ともそれぞれ会談した。

(注)短期出張者の往来再開と定期旅客便の運航再開について、加藤勝信内閣官房長官は10月19日午後の記者会見で、それぞれ早期の再開を目指してベトナム側と詳細を協議することになっていると説明。ベトナム保健省は8月31日付で外国人短期出張者に対する隔離措置を免除する方針を出していたが、具体的な運用が明らかになっていない状況だ(2020年9月4日記事参照)。

(庄浩充)

(ベトナム、日本)

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