米国、対ベラルーシ制裁発動

(ベラルーシ、米国、EU)

欧州ロシアCIS課

2020年10月06日

米国財務省は10月2日、ベラルーシ政府高官8人に対する経済制裁を発動した。同省外国資産管理局(OFAC)が定める制裁対象者リストに加えるもので、米国内の資産を凍結するほか、米国の個人・法人との取引を禁止する。

対象となったのはユーリ・カラエフ内務相、ユーリ・ナザレンコ内務省次官兼国軍司令官、ワジム・イパトフ中央選挙管理委員会副議長など。いずれも8月9日のベラルーシ大統領選挙における欺瞞(ぎまん)行為と抗議デモ参加者への弾圧に関与したとしている。

財務省は、今回の制裁発動はEUや英国、カナダによる措置に同調するものとし、スティーブン・ムニューシン財務長官は「国民の民主的な願望と平和的な権利行使が政府による暴力と抑圧を受けている。米国はパートナーと連携し、民主主義を弱体化させる人物に何年もそのコストを払わせる」と制裁の意義を説明した。

EUは10月2日にベラルーシ政府幹部40人に対して、EUへの渡航禁止(トランジット含む)と資産凍結措置を発動。英国とカナダも9月28日に同様の措置を導入している。

ベラルーシ外務省はEUによる制裁発動に即座に反応。2日に対象人物や内容は明らかにしていないものの、報復措置を講じたと発表した。

専門家の多くは今回の制裁による影響はほとんどないとみている。ロシア国際問題評議会のアンドレイ・コルトゥノフ会長は制裁を「象徴的な意味合いのもの」と評し、政治学者のエフゲニー・ミンチェンコ氏も「装飾的なもので、ベラルーシのエリートや経済が過敏になる内容ではない」と述べた(ロシアメディア「RBK」10月2日)。

一方、今後の行方次第では、ベラルーシ経済に大きな影響をもたらし得るとの意見も見られる。ベラルーシの独立系メディア「ベラルスキー・パルチザン」(9月10日)は、世界大手格付け会社S&Pが制裁導入に伴う国債格付け評価の見直しの可能性を示唆していることに言及し、個人を対象とした制裁でも、外国投資家の心理に悪影響をもたらすと指摘。加えて、欧米による対ロ制裁のように段階的に強化されていった場合、特に対外借り入れへの依存度が高いベラルーシ経済には大打撃となり得るとの見方を紹介している。

(齋藤寛)

(ベラルーシ、米国、EU)

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