レバノンで新型コロナ感染拡大、2020年のGDP成長率予測はマイナス25%

(レバノン、エジプト)

カイロ発

2020年10月29日

レバノンで10月27日、新型コロナウイルスの1日当たり新規感染者数は過去最多の1,809人となった。米国のジョンズ・ホプキンス大学の発表では、レバノンの累計感染者数は7万3,995人、累計死者数は590人となり、人口が約682万人の同国での感染者数の増加は深刻だ。内務省は感染対策のため、地域ごとの外出禁止などの封鎖措置を実施しており、対象地域を毎週指定している。10月19日まで164地域、26日までは79地域を封鎖していた。11月2日までは63地域を封鎖とし、病院や食料品店を除く民間企業や一部の公共機関を閉鎖、集会も禁止となっている。閉鎖地域以外でも夜間の外出禁止令が出ている。

長引く新型コロナウイルス感染拡大に加えて、8月には首都ベイルートで大規模な爆発事件が発生し、市民生活や経済に大きな打撃を与えた。IMFは4月時点では同国の2020年の実質GDP成長率をマイナス12.0%と予測していたが、10月の予測ではマイナス25.0%と大幅に下方修正した。物価も高騰しており、IMFの予測によると2020年の消費者物価指数上昇率は前年比85.5%という大幅なもので、市民生活は困窮している。

市民は社会・経済を立て直しできないとして政府を批判し、頻繁に抗議デモを実施している。3月には債務不履行になっていた中(2020年5月8日記事参照)、ムーディーズが7月にレバノンの信用格付けを最低水準に引き下げており(2020年8月7日記事参照)、財政立て直しも課題となる。大規模爆発事件の責任を取って内閣が退陣した後、宗派対立の影響もあって組閣は難航しているが、社会・経済・財政の立て直しなど多くの課題に対応するため、早期の組閣が望まれている。

(井澤壌士)

(レバノン、エジプト)

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