国内外の有識者の対中認識を分析、米シンクタンク調査

(米国、中国)

ニューヨーク発

2020年10月22日

米国シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)は10月13日、対中政策に関する調査の結果を公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。米国の世論と有識者、欧州・アジアの有識者を対象に、対中認識や今後の政策見通しなどについて調査を実施した。

米国での世論調査は、米国の成人1,000人を対象に7月31日~8月2日に実施された。有識者については、国際情勢およびアジア情勢の議論に影響力のある有識者をCSISが特定し、米国内で440人、欧州とアジアで409人から回答を得ている(注1)。主な結果は以下のとおり。

米世論の過半数が中国を脅威とみる

同世論調査では、「米国にとっての最大の脅威」として、中国を選んだ米国民は54.2%を占めた。次いで、ロシアが22%、北朝鮮が13%と続く。過去の類似の世論調査では、ロシアを最大の脅威とする見方が多く、中国と答える割合は1割強だったことから、中国への脅威認識が増していることが分かる(注2)。これを支持政党別や年齢層別でみると、中国を脅威と選択した割合は、共和党支持者で74%と民主党(39%)より高く、また中高年層(46~66歳は58%、67歳以上は63%)が若年層(18~30歳)の42%より高い。

有識者は同盟国との協調を重視

安全保障における米国の対中戦略に関しては、有識者への調査では「同盟国との協調を優先すべき」との回答は米国で81%、欧州・アジアで74%を占める。他方、世論調査で同盟を重視する割合は45%にとどまり、有識者との乖離がみられる。また、対中経済政策についても、米国の有識者の約7割が多国間協調を支持したのに対し、米世論では国際協定や規則または軍事力による圧力を用いるべきとする割合が35%で最も多かった。さらに、米世論の約3分の1は関税や経済制裁などを用いた「米国の単独主義」を好み、特に共和党支持者でその比率(44%)が高い。

ファーウェイらの5G市場参入禁止を7割の識者が支持

華為技術(ファーウェイ)およびその他中国企業の第5世代移動通信システム(5G)市場への参入禁止については、米国、欧州・アジアとも有識者の3分の2が支持する(米国71%、欧州・アジア67%)。他方、ファーウェイとの取引(部品など)の禁止については、米国の有識者の過半(51%)が支持するが、欧州・アジアでは30%にとどまり、意見が割れた。

(注1)CSISは、有識者の選定方法が主観的なことや国・地域で回答数に偏りがある点が科学的ではないと認めつつも、調査結果が長期的な対中戦略を考える上で示唆に富む、と述べている。調査方法に関わる詳細はCSISウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます参照。

(注2)CSISは例として、2017年に米国シンクタンクのピューリサーチセンターが実施した世論調査外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを挙げている。

(藪恭兵)

(米国、中国)

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