ロシア政府、中国自動車大手と特別投資契約を締結

(ロシア、中国)

モスクワ発

2020年09月30日

ロシア産業商務省は9月25日、中国の自動車大手・長城汽車のブランド「ハバル」を生産するハバル・モーター・マニュファクチャリング・ルスと特別投資契約(SPIC、注)を締結したと発表した。中国自動車メーカーによるSPIC締結は初。同社の組み立て工場が立地するトゥーラ州にエンジンなどの基幹部品工場を建設する。

総投資額は424億ルーブル(約551億2,000万円、1ルーブル=約1.3円)で、工場の完成は2022年末を予定しており、300人以上の雇用創出が見込まれる。SPICに署名したデニス・マントゥロフ産業商務相は「高い現地生産比率はロシア市場での競争優位性を向上させる。SPICは基幹部品の現地生産を進める企業の長期的発展を保証する」と祝辞を述べた。

ハバルは2019年6月にロシアでの生産を開始。廉価なクロスオーバーとスポーツ用多目的車(SUV)を武器に販売台数を伸ばしている。欧州ビジネス協会によると、2019年の販売台数実績は1万2,284台(前年比282%増)だった。新型コロナウイルスによる影響でほとんどのブランドが不調な中、2020年上半期も前年同期を超える販売台数を記録(2020年7月21日記事参照)し、1~8月の販売台数実績は1万255台(前年同期比75%増)に達した。その他の中国メーカーの吉利汽車や奇瑞汽車も1~8月はそれぞれ7,563台(37%増)、4,875第(34%増)と好調を維持している。

その他の外国企業による最近のSPIC関連投資事例では、サンクトペテルブルクで韓国の現代自動車グループの自動車部品メーカー現代ウィアが2020年6月末にエンジン工場の建設を開始した。サンクトペテルブルク市政府と現代自動車の間で締結したSPICに基づくもので、2021年10月に操業を開始する予定。

(注)連邦政府や連邦構成体(州・地方・特別市)政府、地方自治体(市町村)政府を契約相手として、大型投資や雇用創出、新技術の導入、現地調達率の拡大などを約束することで、企業利潤税(法人税)や資産税、土地税などの優遇措置、土地貸与やインフラ整備支援、連邦政府からの各種補助金などが提供される。契約(権利義務)内容は個別交渉により非公開。契約期限は投資額によって異なり、500億ルーブル以下の場合15年、500億ルーブル超の場合20年。

(戎佑一郎)

(ロシア、中国)

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