米財務省、給与税の支払猶予に関わるガイダンス発表、産業界は利用に消極的

(米国)

ニューヨーク発

2020年09月03日

米国財務省と歳入庁は8月28日、給与税の一部である社会保障税の支払い義務を猶予する措置の詳細を発表した。8月8日の大統領覚書(2020年8月11日記事参照)に基づくもので、当初の支払い期限から4カ月の猶予を与える。産業界は支払いの猶予ではなく免除を求めており、猶予措置の活用に消極的な意見を寄せている。

歳入庁のガイダンスPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)によると、財務長官は新型コロナウイルスの影響を受けた雇用主に対して、9月~12月の4カ月分の従業員給与において従業員が負担する社会保障税6.2%の納付を猶予し、納付期間を2021年1月~同年4月末の間とした(注)。ただし、対象は2週間分の平均給与(税控除前)が4,000ドル未満に相当する従業員に限定される。

今回の措置について、米国内の業界団体は8月18日、スティーブン・ムニューシン財務長官や議会上層部に書簡外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを送付し、単なる納付猶予は従業員にとって翌年の税負担増(最大2,232ドル増)になるため、多くの企業が利用しないと伝えるとともに、議会に対して支払い義務の免除などの支援措置を求めていた。書簡には米国商工会議所や全米製造業協会(NAM)、米自動車部品工業会(MEMA)や全米小売協会(NRF)など33団体が署名している。ワシントンにあるコビントン・バーリング法律事務所のマイケル・チッテンデン弁護士は歳入庁のガイダンスを踏まえ、「雇用者が抱いていた懸念を和らげるどころか、懸念をより現実のものにした」と述べ、大企業の参加は少ないとの見方を示した。(「ウォールストリート・ジャーナル」紙電子版、9月1日付)

給与税に関しては、トランプ大統領が11月の大統領選挙で勝利した場合に、給与税を恒久的に撤廃する意向を表明しているが、現時点では政権側から具体的な動きはみられていない。他方、社会保障庁は8月24日、給与税が2021年以降恒久的に撤廃された場合、同税を財源とする社会保障のための準備金が2023年半ばに枯渇とするとの試算を出している。

(注)給与税に関しては、連邦保険拠出法(Federal Insurance Contributions Act:FICA)に基づき、社会保障税と医療保険税が雇用者および被雇用者にそれぞれ賦課される。詳細は歳入庁ウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます参照。

(藪恭兵)

(米国)

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