旅行・観光業界、「新型コロナ危機」脱却のため入国後の検疫廃止を訴え

(EU)

ブリュッセル発

2020年09月24日

国際空港評議会(ACI)・欧州地域総会や欧州ホテル・外食産業協会(HOTREC)など、欧州の旅行・観光分野の25団体は9月18日、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長宛ての公開書簡PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし、入国後の(自主隔離などの)検疫を廃止し、その代わりとして、EU共通の旅行客に対する感染検査プロトコルを策定することを要請した。

検疫はリスクベースの措置ではないと廃止を要求

EU域内では現在、加盟国ごとに異なる入国制限措置をとっている。欧州委は9月4日、入国制限措置を導入する際の共通の基準を加盟国に対して提案し、今後、EU理事会で検討されることになっている(2020年9月7日記事参照)。25団体は、その提案を全面的に支持するとし、早期の勧告(Recommendation)の採択および実施を求めた。

25団体が特に強く求めているのが、入国後の検疫の廃止だ。公開書簡において、欧州疾病予防管理センター(ECDC)の見解などを根拠に、検疫を含めた極端な入国制限措置はリスクベースの措置ではなく、感染拡大防止に有効ではない、と主張した。欧州委も上記の9月4日付提案において、リスクの高い地域からの入国者に求める対応として、検疫より感染検査の実施が望ましいとしている。

25団体は、欧州委が主導して、加盟国、産業界、医学専門家とともに、EU共通の感染検査プロトコルを策定するように求めた。感染検査こそリスクベースのアプローチで、高リスク地域からの入国者の(自主隔離などの)検疫の廃止または期間の短縮が可能となり、新型コロナウイルスによって脅かされてきた、EUの「移動の自由」を復活させる道筋となるとしている。

新型コロナウイルス感染症の拡大阻止のため、世界各国が行った外出規制や渡航制限は、旅行・観光業界に大きな打撃を与えており、業界を取り巻く環境は依然として厳しい。特に航空需要の落ち込みは大きく、ACIによると、欧州内の空港の乗降客数は、夏季休暇シーズン後半の8月中旬でも前年同期比65%減、また9月の最初の2週間も73%減だった。2,700万人以上を雇用し、EUのGDPの10%超を占める同業界が危機から脱却するため、フォン・デア・ライエン委員長に迅速な対応を求めている。

(滝澤祥子)

(EU)

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