ロシアの大学、産学連携に高評価、英専門誌のランキング

(ロシア)

サンクトペテルブルク発

2020年09月18日

ロシアの大学が産業界との連携で高い評価を得ている。英国の「タイムズ・ハイアー・エデュケーション」誌(THE)が発表した世界大学ランキング(9月2日)によると、調査対象となったロシアの大学の多くがイノベーション創出を目指す企業からの視点で高ポイントを得た(添付資料表参照)。他方、論文などの研究結果とその影響力の評価が低い点が弱みとして明らかになった。

総合順位で上位200位にランクインしたのはモスクワ国立大学(174位)。前回の189位から順位を少し上げた。また、技術系の大学が順位を上げている。サンクトペテルブルク国立総合技術大学(501~600位→301~350位)、モスクワ工科大学(801~1000位→401~500位)などが該当する(注)。

評価基準別でみると、ロシアの大学は「産業収入」で高評価を得ている。「産業収入」は、イノベーション創出や新技術開発を目指す企業が資金を投じてでも産学連携を希望するほど魅力的な研究などを行っているか、という指標だ。モスクワ国立大学の「産業収入」評価は97.7ポイントで、これは世界総合1位のオックスフォード大学(68.7ポイント)や2位のスタンフォード大学(90.1ポイント)、3位のハーバード大学(46.8ポイント)などの世界的な有力大学をしのぐ。ほかにも、モスクワ物理工科大学(MIPT)(100ポイント)、国立光学IT機械大学(ITMO)(90.1ポイント)、サンクトペテルブルク国立総合技術大学(74.8ポイント)のように総合上位の大学を上回る大学が多く、ビジネスへの貢献という面でロシアの大学の層の厚さがうかがえる。

一方、ロシアの大学の課題は論文などの「引用」や「研究」への評価が低いことだ。例えば、モスクワ国立大学の「研究」は67.6ポイント、「引用」は12.9ポイントだった。これらの指標で90ポイント台後半が一般的な総合上位の大学から大きく引き離されている。モスクワ国立大学以外でも、研究結果やその影響力で評価が伸び悩む大学が多くみられた。

THEは世界大学ランキングを毎年発表しており(2019年11月25日記事参照)、2020年は93カ国・地域から1,500以上の大学を対象に実施した。基準は前年同様、a.学習環境(評判、学生数に対する職員数、博士号数と学士号数の比率、博士号と職員数の比率、研究機関収入)、b.研究(評判、研究収入、1人当たりの論文数)、c.引用(研究の影響力)、d.産業収入(知識の移転)、e.国際見通し(留学生と外国人職員の割合、国際協力)。今回はロシアの大学48校(前回比9校増)が調査対象となった。

(注)201~400位は50位刻み、401~600位は100位刻み、601~1,000位は200位刻みで、1,001位以下はまとめて発表される。

(一瀬友太)

(ロシア)

ビジネス短信 ad88bf655064c539