ハンガリーの「VATギャップ」、EU 加盟国で減少幅が最大に

(ハンガリー)

ブダペスト発

2020年09月23日

ハンガリーでは2010年以来、脱税対策に重点が置かれてきた。その取り組みの成果は、付加価値税(VAT)総税債務(理論上のVAT収入)と実際に徴収した金額の差である「VATギャップ」に表れてきている。欧州委員会が9月10日に発表した報告書によると、ハンガリーの2018年のVATキャップは、2017年の13.5%から8.4%へ、5.1ポイント減少し、加盟国の中で最大の減少幅を記録した(添付資料図1、図2参照)。

2010年以来3期連続で政権を握るオルバーン政権は、徴税の公正化に向け複数の対策を導入してきている。最初の取り組みとして、2014年に小売店と税務署をオンラインでつないだキャッシュレジスターを導入。2015年には、電子貨物輸送システムEKAERを導入した(2015年4月24日記事参照)。また、オンライン請求システムが2018年7月から導入され、10万フォリント(約3万5,000円、1フォリント=約0.35円)以上のVATを含む全ての請求データが、請求と同時に税務当局にも送信されることになった。さらに、2020年7月には10万フォリント以上の下限を撤廃。2021年内には、個人が発行したものも含め全ての請求情報を税務当局が把握できるようにする計画だ。

バルガ・ミハーイ財務相は「公正な徴税に向けたハンガリーのオンライン徴税システムは、国際的にも画期的で、(脱税を防ぎ税収を確保することで)減税の余地も生み出している」と、通信社MTIへのブリーフィングでコメントした。また、バルガ財務相は「脱税率をさらに下げることが目標」と強調し、「新型コロナウイルスの危機下においても公正な徴税により予算のバランスを維持しながら、減税政策を継続できる」と続けた。ハンガリーでは近年、多くの物品・サービスでVATが減税されてきている(添付資料表参照)。

欧州委員会のパオロ・ジェンティローニ委員(経済担当)も、新型コロナウイルス感染拡大によるEUの経済見通しの悪化とVAT収入の減少を踏まえ、「VAT詐欺への対応をさらに強化する必要がある」とコメントしている。

(バラジ・ラウラ)

(ハンガリー)

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