南ア準備銀行総裁が講演、新型コロナ対策で需要面を刺激

(南アフリカ共和国)

ヨハネスブルク発

2020年09月02日

英国王立国際問題研究所(チャタムハウス)は8月20日、ウェビナー「南アフリカ共和国の経済見通し」を開催した。登壇した南ア準備銀行(SARB)のレセチャ・ガニャゴ総裁は、南ア経済の今後の見通しについて、新型コロナウイルスの感染拡大が、世界経済に前例のないショックをもたらし、既に悪化していた南ア経済をさらに悪化させているとし、2020年第2四半期は1930年代の世界大恐慌以来最も深刻な状況となるだろう、と述べた。

この経済的危機に対して、SARBは中央銀行として需要ショックへの対応に重点を置き、以下5つの刺激策を取っているとした。

  1. 政策金利の切り下げ:2020年1月~7月に、5段階に分けて6.5%から3.5%に切り下げ(3.5%は過去最低)
  2. 銀行への追加の流動性資産供給
  3. 金融規制の適用除外(regulatory relief):銀行の流動性カバレッジ比率(LCR)などの最低水準の引き下げ
  4. 中小企業支援向け基金:最大でGDPの4%となる2,000億ランド(約1兆2,600億円、1ランド=約6.3円)まで拡大可
  5. 国債の買入:発行済みの南ア国債を計300億ランド市場から買入・保有

南アの経済成長率の見通しについてガニャゴ総裁は、7月の金融政策委員会で発表したとおり、2020年はマイナス7.1%、2021年は2%以上のプラス成長を予測し、2022年以降の予測は現時点では困難だ、との見方を示した。インフレ率について、新型コロナウイルスの経済への影響が、以前にSARBが経験した危機より悪化する場合でも、対処できるだけの政策的余地があるとして、現時点の予測範囲である2021年末まで問題になるとは考えていない、との意見を示した。直近7月のCPI(消費者物価指数)上昇率は3.2%で、SARBが2009年からインフレ率のターゲットとしている3~6%の幅に収まっている。

Q&Aセッションでは、南アの主要金融機関の健全性に関する質問に対し、ガニャゴ総裁は「南アの金融セクターは十分な資本と流動性を担保できており、『コロナ禍』においても健全な状態を維持(sound)している」と答えた。

(高橋史)

(南アフリカ共和国)

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