米政府、ブラジル製鉄鋼への232条関税の数量割り当てを一部削減

(米国、ブラジル、メキシコ)

ニューヨーク発

2020年09月03日

トランプ米国大統領は8月28日、1962年通商拡大法232条(以下、232条)に基づく鉄鋼・アルミニウム製品への追加関税につき、ブラジルからの鉄鋼輸入に与えていた数量割り当ての一部を削減すると大統領布告外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで発表した。正式には9月2日付の官報外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで公示した。

米政府は2018年3月以降、232条に基づき指定した鉄鋼・アルミニウム製品に対して、25%(鉄鋼)と10%(アルミニウム)の追加関税を課している(2018年3月9日記事参照)。しかし、個別の交渉で合意した国には、追加関税の適用除外または数量割り当ての措置を与えている。ブラジルは2018年5月の合意に基づき、製品ごとに一定量の輸入までは追加関税を猶予する数量割り当ての扱いとなっていた(注1)。

今回の布告では、「数量割り当てを決定した当時から米国内の鉄鋼市場が大きく変化している」ことを理由に、ブラジルとの協議を経て同国からの鉄鋼関連の半製品の数量割り当てを削減するに至ったとしている。削減対象となるのは、米国の関税譲許表でHTSコード9903.80.57外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに指定されている品目となる(注2)。数量割り当ては2018年5月の合意時に設定していた年間35億570万7,831キログラム(約350万5,708トン)から10%削減し、31億5,513万7,048キログラム(約315万5,137トン)となり、2020年の輸入量に適用される。

布告に基づき、米国通商代表部(USTR)は8月31日、ブラジルからの鉄鋼半製品に供与していた2020年分の数量割り当ての残存分について、35万トンから6万トンに引き下げたことを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした(注3)。USTRは2021年分の数量割り当ての扱いに関しては12月にブラジルと協議を行うとしている。

布告では、今回の数量割り当ての削減が既に米国内で予定されていた第4四半期(10~12月)における生産活動を遅滞または混乱させる可能性に触れている。その上で、商務長官に対して品目別に追加関税の適用除外を審査する現行制度に加えて、以下1.~4.の条件を満たす申請者に対して救済措置を早急に講じるよう指示している。

  1. 2020年8月28日より前に今回の数量割り当て削減の対象になった鉄鋼半製品の生産または出荷について、書面による契約を締結している。
  2. 当該契約において2020年12月31日までに米国に出荷する量が明記されている。
  3. 当該半製品が米国内での生産活動に用いられ、かつ契約で定められた仕様を満たす半製品をほかのサプライヤーから調達できない。
  4. 救済措置が取られない場合に、米国内での生産活動に重大な混乱をもたらす。

メキシコとも協議の上、232条追加関税の適用除外を維持

USTRは別途、メキシコとも同国からの鉄鋼輸入に関して協議を行ったとしている。その結果、メキシコが2021年6月まで厳格な輸出監視体制(2020年9月1日記事参照)を敷くことに合意したため、232条追加関税の適用除外を維持するとしている。メキシコとも12月に鉄鋼製品の貿易状況に関して協議を行うとしている。

(注1)合意内容の詳細に関しては2018年6月5日付の官報外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを参照。

(注2)鉄鋼半製品のブルーム、ビレット、スラブで、HTSコード7207.11.00、7207.12.00、7207.19.00、7207.20.00、7224.90.00に該当するもの(ただし、7224.90.0015、7224.90.0025、7224.90.0035は除く)。

(注3)米国通商法に詳しい弁護士によると、2020年の数量割り当ての残存分35万トンは今回の布告により消滅するが、6万トンを上限とする救済措置を設けるとしているため、USTRの声明はこれらを反映しているとみられる。

(磯部真一)

(米国、ブラジル、メキシコ)

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