トランプ米大統領、国連演説で中国の新型コロナ対応を批判

(米国、中国)

ニューヨーク発

2020年09月23日

ドナルド・トランプ米国大統領は9月22日、国連総会の一般討論演説外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、中国による新型コロナウイルスへの対応を批判した。国連に対しても、テロリズムや人権問題など世界が抱える真の課題に焦点を当てるべきとする一方、米国は最近仲介を行った中東和平協定の成果などで国際平和に貢献していると強調した。

2020年の国連総会は新型コロナウイルスの影響を受けて、そのほとんどがバーチャルで開催されており、各国首脳の一般討論演説も事前の録画動画を流す形式で行われている。トランプ大統領は約7分間の演説の冒頭で、新型コロナウイルスを「中国ウイルス」と呼び、「われわれはこの疫病を世界に解き放った中国に責任を負わせなければならない」と、中国の対応を批判した。他方、米国はもうすぐ開発されるワクチンを広く普及させ、「ウイルスを倒し、パンデミックを終わらせ、かつてないほどの繁栄、協力、平和の新たな時代に突入する」と力説した。

国連に対しても、有効な機関でありたいなら、テロリズム、女性の抑圧、強制労働、薬物や人身売買、宗教の迫害や宗教的少数派の民族浄化といった世界が抱える真の課題に焦点を当てるべきだとした。他方、米国はそれらの問題に対して、最近仲介を行ったイスラエルと、アラブ首長国連邦、バーレーンとの平和協定締結(2020年9月23日記事参照)など、さまざまな成果を残してきたと強調した。最後に国連加盟国に対して、「自国民を大切にすることによってのみ、協力のための真の礎を見つけることができる」と説き、自国第一を掲げるべきだとした。

米国メディアの中には、トランプ大統領が再選を狙う中、対抗馬である民主党のジョー・バイデン候補よりも対中強硬派と演出するとともに、新型コロナウイルスの国内対応に関する批判をかわすために、国内有権者を意識して演説を行った、と分析するものもある。

一方、各国首脳に先立って演説を行った、アントニオ・グテーレス国連事務総長は激化する米中対立を念頭に、世界が非常に危険な方向に進んでいるとし、「われわれは新たな冷戦を回避するために、できることを全て行う必要がある」と警鐘を鳴らした。

(磯部真一)

(米国、中国)

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