トランプ米大統領が中東諸国の平和協定締結に立ち会い、国内ではおおむね評価

(米国、イスラエル、アラブ首長国連邦、バーレーン、中東)

ニューヨーク発

2020年09月23日

トランプ米国大統領は9月15日、イスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)、バーレーンとの平和協定の締結に際し、仲介役としてホワイトハウスで共同会見を開催し、協定にも立会人として署名した。

共同会見では、「アブラハム合意」と呼ばれる4カ国による宣言文PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)のほか、2国間の平和協定がイスラエル-UAE間PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)イスラエル-バーレーン間PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)で署名された。宣言文では、中東平和の重要性を共通認識とし、今回の国交正常化を歓迎するとともに、共通利益に基づく友好関係の強化拡大を推進することが明記された。2国間協定では、大使館の設置や個別分野での協力などが合意されている(2020年9月14日記事参照)。

トランプ大統領は共同会見で、今回の合意を「新しい中東の夜明け」と表現した。アブラハム合意が中東地域の包括的な平和の礎となるとして、イスラエルのベンヤミン・ネタヤニフ首相とともに、他のアラブ諸国の参加を呼び掛けた。各署名文書では、トランプ大統領による中東和平案外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますや中東平和に向けた取り組みへの言及があり、それらへの謝意の下、今回の署名の立会人になるよう、大統領に求める旨の記述がなされている。

民主党の大統領候補のジョー・バイデン前副大統領は、今回の合意を歓迎するコメントを寄せ、自らの当選後も同様の取り組みを進める方針を示した。米国議会のジム・リッシュ上院外交委員長(共和党、アイダホ州)も歓迎の意を表明している。今回の合意は、トランプ大統領の支持基盤で、国民の4分の1を占める福音派をはじめとするキリスト教徒に訴求するとみられ、複数のキリスト教団体が賞賛する声明を出している。

米国商工会議所は声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表し、UAEは米企業にとって中東地域の重要なハブ拠点だと述べ、同地域のモノとヒトの移動がより自由になることへの期待を示した。国交正常化に伴い、イスラエルとUAE間では、経済関係強化に向けた計画が複数発表されている(2020年9月17日記事参照)。米商工会議所によると、米国のイスラエルとUAEとの双方向の貿易額はそれぞれ年間500億ドルと250億ドルに上る。

戦略国際問題研究所(CSIS)の中東専門家ジョン・アルターマン上級副所長は、イスラエルと戦争状態にないアラブ諸国が、今回の合意に続く可能性を指摘する。他方、イスラム世界で主導的役割を果たすサウジアラビアについては、イスラム教の聖地を有することなどから、同国のイスラエルとの国交正常化には時間を要する、との見方を示した。

(藪恭兵)

(米国、イスラエル、アラブ首長国連邦、バーレーン、中東)

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