社会支援諸機関への負担金低減を求める企業の訴訟が増加

(ブラジル)

サンパウロ発

2020年08月17日

7月9日付現地「バロール」紙によれば、「Sシステム」と呼ばれる、社会支援諸機関への負担金低減を求めて訴訟を起こす企業が増加しているという。「Sシステム」とは、職業訓練プログラムを提供する全国工業訓練機関(SENAI)や、福祉サービスを提供する全国商業サービス訓練機関(SESC)といった、民間企業連盟が職業訓練プログラムや労働者の福祉を増進する目的で設立された機関のこと。名称が「S」で始まる9つの機関で構成される。

連邦政府は、企業がSシステムのサービスを享受するためには、連邦国税庁に対し負担金を支払う義務を定めている。これは同システムの貴重な財源になっている一方、一部の企業にとっては負担が大きくなっていた。

今回の訴訟の争点は、負担金の計算方法について、連邦政府は、「同負担金が各企業の給与支払総額の0.2%から2.5%の範囲で計算する」と解釈していた一方、一部の民間企業は1980年代に公布された法律第6.950号と法令第2.318号を根拠に、「ブラジルの最低賃金の20倍までに限る」と解釈した点にある。連邦高等裁判所(STJ)は2020年2月17日、特別上訴1570980-SP号で、同負担金を計算する際にベースとなる金額の解釈について、「一部の民間企業の解釈が正しい」との判決を下した。これを踏まえ、同負担金の低減を求めて訴訟件数が増加した。同日付の「バロール」紙によれば、サンパウロ州でも、同様の訴訟につき、第一審や第二審で民間企業側の解釈を認める判決が下されており、同訴訟に携わったと報じられているアベ・ジョバニーニ法律事務所に、ジェトロサンパウロ事務所が確認(7月30日)したところ、確かにそのような判決が下ったとのこと。

なお、3月31日付大統領暫定措置令932号(注)により、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けた緊急経済対策措置の一環として、同負担金の支払い額を、3月31日からの3カ月間5割削減するなどの一時的な措置が取られている。これに対して「Sシステム」は、財源確保の観点から同法律の撤回を要求した。しかし、5月18日に連邦最高裁判所(STF)はその要求を退けている。

(注)7月14日より法律第14025号として施行。

(エルナニ・オダ、古木勇生)

(ブラジル)

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