第2四半期のGDP成長率、前年同期比マイナス17.1%、個人消費の減速目立つ

(マレーシア)

クアラルンプール発

2020年08月25日

マレーシア中央銀行と統計局は8月14日、2020年第2四半期(4~6月)の実質GDP成長率を前年同期比マイナス17.1%と発表した。アジア通貨危機時の1998年第4四半期(10~12月)のマイナス11.2%以来の過去最低を記録した。新型コロナウイルスの国内感染拡大防止のため3月18日から発出された移動制限令により、個人消費と輸出が大きく落ち込み、成長を押し下げた(添付資料図参照)。移動制限令下では5月4日まで経済活動が大きく制限されていたため、月別では4月が最も低く前年同月比マイナス28.6%だった。5月はマイナス19.5%、6月はマイナス3.2%と徐々に回復した。

需要項目別では、全体の約6割を占める個人消費が18.5%減と前期から20ポイント以上減少した(添付資料表1参照)。収入の減少や、生活必需品を除く小売店の操業停止のほか、観光客の減少も要因となった。景況感の大幅な悪化、世界的な需要の減少を背景に、投資、輸出入も軒並み2桁台の減少となった。

 産業別では、全体の6割を占めるサービス業は16.2%減で、前期の3.1%増からマイナス成長に転じた(添付資料表2参照)。個人消費の減退を反映して、小売り、食品・飲料、宿泊サービスも成長率は2桁減だった。他方、情報通信は在宅勤務の増加から4.9%増とプラス成長を維持した。製造業は18.3%減で、特に輸出の減速が響いた。5月4日から経済活動が再開し、工業生産指数は全体的に回復基調だが、依然として操業条件に制約があり、完全な回復とは言えないのが現状だ。鉱業は石油・ガスの需要減、建設は工事案件の停止により、それぞれ20.0%減、44.5%減となった。農業はパーム油の生産が回復し、前期から転じてプラス成長となった。

産業界は悲観的な見通し

中央銀行は2020年通年の成長率をマイナス5.5%~同3.5%と予測した。4月に発表したマイナス2.0%~プラス0.5%から下方修正したが、第3四半期(7~9月)以降の復調を見込む。2021年通年の成長率は反動増により5.5%~8.0%とした。政府見通しはおおむね楽観的だが、産業界とは温度差がある。マレーシア製造業者連盟(FMM)は、物流や原材料コストの価格高騰、供給不足などのサプライチェーンへの影響が継続すると懸念する。ソウ・ティエン・ライ会長は「ビジネスの回復は産業により4カ月から最大2年かかる」と、悲観的な見通しを示した。

(田中麻理)

(マレーシア)

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