年金10%の引き出し法が施行、7月30日から申請開始

(チリ)

サンティアゴ発

2020年08月04日

憲法改正を伴う例外的措置として、確定拠出型年金(AFP)の積立額の一部引き出しを可能とする法律が7月30日に施行され、同日から申請受付が開始された。

同法は、新型コロナウイルスが国内でまん延したことによる生活難を抱える国民を救済するための措置として4月20日に下院に提出されており、政府は同法案には一貫して反対の姿勢を示していた。しかし、現政権の発足当初から、与党連合の上下両院における議席数がそれぞれ過半数に達していないことに加え、与党連合の一部の議員らが同法案への賛成票を投じたことにより、可決に至った。ピニェラ大統領は7月28日に自身の就任後5度目となる閣僚交代を実施しているが、年金引き出し法可決によって空中分解しつつある与党連合の統制を再度強める狙いもあるとみられている(2020年7月30日記事参照)。

同法の対象は確定拠出型年金(AFP)の加入者で、積立額の10%を引き出すことが可能となる。引き出し上限は150UF(注)(約60万円)で、下限は35UF(約14万円)とされており、積立額の10%が下限に満たない場合は全額を引き出すことが可能だ。

引き出しの申請はウェブサイトからも行うことが可能と伝えられているが、手続きの受付が開始された30日には年金運用会社のオフィス前に早朝から多くの人が殺到し、行列を作った。申請期間は7月30日から1年間とされているものの、チリ年金監督庁(SP)によると、申請開始から3時間で既に177万2,786人が申請手続きを行っている。

(注)1UFは約2万8,700ペソ(約4,000円、1ペソ=約0.14円)。UF:消費者物価指数の変動率に応じて調整されるインデックスでUnidad de Fomentoの略。

(岡戸美澪)

(チリ)

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