ISO、生物多様性の保全に関する規格化を行う委員会を新設

(スイス、世界)

ジュネーブ発

2020年08月14日

国際標準化機関(ISO、在ジュネーブ)は8月4日、生物多様性の規格作りを開始するための新たな専門委員会(Technical Committee:TC)であるISO/TC 331外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(生物多様性)を設置したことを発表した。委員会の設置はフランスが提案し、委員会の幹事局は提案国のフランスが務める。

2019年の国連報告書「生物多様性と生態系サービスに関するグローバル評価報告書2019」は、生物多様性の損失をもたらしている主な要因の影響を減らす対策が取られなければ、今後数十年以内で約100万種の動植物が絶滅の危機にあると警告している。ISOでは、ISO 14000シリーズの作成で知られるTC 207(環境マネジメント)など、既存の委員会が環境保護や生物多様性に資する規格の開発を行ってきた。しかし、生物多様性そのものに注目する国際規格の作成はTC 331が初となる。現在のところ、TC 331の今後のスケジュールは未公表。

○専門委員会の作業範囲

TC 331は、生物多様性の分野において、あらゆる組織が持続可能な発展に貢献できるよう、要求事項、原則、枠組み、手引き、サポートツールを提供する規格化を行う。水、大気、土壌、海水の環境に対する検査や測定の手法の規格化は対象外。

○規格の種類

フランスが提案する具体的な規格化の領域は以下のとおり。

  1. 用語と定義
  2. 原則と枠組み:あらゆる組織がバリューチェーン全体で生物多様性に関するインパクト評価、行動計画の策定、進捗管理を行うための原則や枠組みを作成する。
  3. 地域的アプローチ(territory approach):特定の地域内で生物多様性の取り組みを実施するための要求事項や指針を提供する。
  4. 特定の生態系のケーススタディ:特定の生態系で実施されている生物多様性アプローチのケーススタディを収集し、技術報告書(Technical Report:TR)を作成する。
  5. 特定の生物多様性問題に関する指針:「自然を基盤とした解決策〔注〕」、生物の種に関連する課題や技術など、生物多様性に関わる課題に対する指針を作成する。
  6. 生物多様性データの収集と交換:生物多様性に関するデータの収集とその交換に関する指針を作成する。

〔注〕生態系を保護・維持・修復し、その機能を効果的に利用して社会や経済の問題を解決していくこと。例えば、サンゴ礁やマングローブの機能を使って高潮の影響を防ぐこと。自然を守りつつ、災害防止、海岸線保護のコストを抑制する(参照:環境省資料2020年2月PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))。

(小谷由紀子)

(スイス、世界)

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