ワタラ大統領が10月の大統領選立候補を表明、憲法違反と野党は反発

(コートジボワール)

アビジャン発

2020年08月13日

コートジボワールのアラサン・ワタラ大統領は8月6日、60周年となる独立記念日に先立つ国民演説で、10月31日に実施が予定されている大統領選挙に立候補すると表明した。3月に、大統領選へは立候補しないとして「指導者の世代交代」を宣言し、後継者としてゴン・クリバリ前首相を指名していた。しかし、「選挙を3カ月後に控え、与党連合の統一候補として立候補予定だったクリバリ首相の死去(2020年7月22日記事参照)という不可抗力の事態を前に、国家の最善の利益を最優先させるため続投する決断を迫られた」と述べた。

与党連合「民主主義と平和のためのウッフェ主義者連合(RHDP)」は7月29日に開催した政治評議会において、全会一致でワタラ大統領を新たな候補者に擁立し、立候補を要請していた。コートジボワール憲法では、「5年2期」として3選禁止が規定されており、「3期目」となるワタラ大統領の立候補をめぐってはこれまでも、与野党、有識者の間で批判合戦が繰り広げられていたが、今回、正式に立候補を表明したことで、野党の反発が高まっており、攻防戦が激化することが予想される。

ワタラ大統領の支持者は、2016年に憲法が改正されたことに伴い、現職大統領の任期は憲法改正時が1期目になるという解釈をしている。他方、「法の不遡及(そきゅう)」を根拠にワタラ大統領は次回が3期目となり被選挙資格はないとみる向きも多く、法学者の間でも、立場の違いにより解釈が分かれている。野党は「憲法違反」として批判を強めている。

今後、独立選挙管理委員会への立候補届け出を経て、最終的な被選挙資格の認定は、憲法評議会に委ねられることになるが、同評議会議長をはじめ過半数の評議会メンバーは、現地報道などによればワタラ大統領の息がかかった人選とされ、否認される可能性は低い。

国内では既に、政府が選任した独立選挙管理委員会の構成をめぐり、野党が公正性を担保できないと反発し、同委員会の即時解散を訴えている。連合政権から野党に下野した主要政党であるコートジボワール民主党(PDCI)を中心とする野党グループは、アフリカ連合のアフリカ人権裁判所へ提訴し、同裁判所は先ごろ、同委員会の再編を促す判決を下した。しかし、政府は、2019年初頭の与野党の協議に基づき、構成メンバーの均衡化が図られているとの立場を崩さず、暗礁に乗り上げた状態だ。選挙を3カ月後に控え、与野党間で早期の合意に至らなければ、選挙プロセスの遅延も予想される。(「Agence Ecofin」7月15日)

RHDPを構成するコートジボワール民主平和連合(UDPCI)は8月2日、与党連合から離脱し、マブリ・トワケス党首が立候補を表明した。大統領選挙を前に与党連合からの離脱が相次ぎ、内部亀裂が表面化している。

これまでに、PDCIのコナン・ベディエ党首、イボワリアン人民戦線(FPI)のアフィ・ンゲッサン党首も立候補を表明。また、国際刑事裁判所(ICC)に起訴され、その後無罪となったものの、保護観察下にあるローラン・バグボ前大統領は、国内の裁判で有罪判決を受け選挙権をはく奪されている。

西アフリカ地域では2020年から2021年にかけて、コートジボワールのほかギニア(10月)、ブルキナファソ(11月)など選挙が相次いで実施される予定だ。政情の安定に向けて透明、民主的、公正な選挙の実施が課題となっている。

(渡辺久美子)

(コートジボワール)

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