前外相に続いてダンカン副大統領が辞職、クリバリ首相の死去で選挙情勢が不透明に

(コートジボワール)

アビジャン発

2020年07月22日

コートジボワール大統領府は7月13日、アラサン・ワタラ大統領が7月8日付でダニエル・ダンカン副大統領の辞表を受理したと発表した。ゴン・クリバリ首相が8日に急死したばかりで、ワタラ大統領は側近を相次いで失った。2018年末には、与党連合「民主主義と平和のためのウッフェ主義者連合(RHDP)」を構成していた主要政党のコートジボワール民主党(PDCI)が離脱するなど、大統領選挙を前に、ワタラ政権の求心力の低下が鮮明となっている。

現地報道によると、同副大統領は2月27日にワタラ大統領へ「一身上の都合」で辞任を申し出ていたが、再三にわたり再考を促された末、最終的に辞表の受理に至ったとされる。

コートジボワールでは、10月31日に大統領選挙が予定されている。ワタラ大統領は不出馬を表明し、後継者として3月にクリバリ首相が指名され、RHDPの公認統一候補として立候補の予定だった。有力候補とみられていた同首相の死去で、3カ月後に迫った選挙戦への影響は避けられない見通しだ。

健康に不安を抱えるクリバリ首相の指名をめぐっては、RHDP内で意見の不一致があったとされる。ワタラ大統領の側近のマルセル・アモン=タノー前外相が3月に辞任したのに続き、ダンカン副大統領も辞任し、内部の亀裂が広がっているとみる向きが多い(アフリカ・インテリジェンス7月15日)。

次期大統領選をめぐってRHDP各党の思惑が交錯し、離脱したPDCIは6月末、コナン・ベディエ元大統領を公認候補に指名するとともに、最大野党イボワリアン人民戦線(FPI)との結束を強めている。また、2010年の内政混乱でワタラ大統領の政権掌握に大きな役割を果たしたギヨーム・ソロ元首相は、早くから立候補の意向を表明していたが、現在、亡命を余儀なくされている。

ワタラ政権の求心力低下が表面化する中、後継者のクリバリ首相の死去によって、ワタラ大統領が翻意し、続投を目指す可能性も報じられている。2期10年の任期を務めた76歳のワタラ大統領は国際社会に対し、「政権の世代交代」を約束し、フランスのマクロン大統領は3月、これを「歴史的な決断」として称賛した。西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)は、任期2期の順守を勧告している(アフリカ・インテリジェンス7月15日)。

憲法で禁じられる3期目の出馬を強行すれば、国内政治勢力の反発や、国際社会の圧力を招くのは必至とみられ、選挙情勢は不透明さを増している。

(渡辺久美子)

(コートジボワール)

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