コロナ禍を契機に進むサウジ国内製造業振興プロジェクト

(サウジアラビア)

リヤド発

2020年08月28日

サウジアラビア国内メディアに、「メード・イン・サウジアラビア・プロジェクト」という言葉が登場し始めた(8月24日付「アラブ・ニュース」など)。プロジェクトを主導するのは産業・鉱物資源省で、詳細は未発表ながら、国内の製造業を発展させるために、国民に国産品を進んで購入してもらおうという取り組みだ。石油への依存度を減らし、国内産業の多角化を目指すことは2016年から始まった国家長期計画「ビジョン2030」に基づく改革の方向とも合致する。また、新型コロナウイルス禍により、世界中でマスクなどの医療用品や食料確保が課題となったことも、国内供給体制強化のモチベーションになっているとみられる。

プロジェクトの構想には、製造分野における外国投資誘致の強化も含まれている。サウジアラビアは6月に一部の品目で輸入関税を引き上げたが(2020年6月22日記事参照)、この狙いとして、コロナ禍で悪化する国家財政の歳入拡大策の1つと目される以外に、輸入品の参入障壁を高くすることで、国内での製造をより活発化させたい思惑もある、との見方もされている。また、現地調達・政府購買庁は同時期に、政府が調達する医療用品29品目を国産品に限定するとの発表も行っており〔6月3日付サウジアラビア国営通信(SPA)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます〕、国内製造の強化と国産品優先調達の流れがより明確になってきている。

サウジアラビアでの製造基盤といえば、石油精製や石油化学関連がまず思い浮かぶが、国内の専門家の間では、3DプリンターやIoT(モノのインターネット)などのデジタル技術を活用した、先進的なモノづくりに取り組む企業が国内に増えることを期待する声がある。その実現のためには、国内の技術開発や、研究機関が企業サポートを積極的に提供することが肝要としている。

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、サウジアラビアでは社会のデジタル化がより急速に進んでいることもあり、石油・石油化学のイメージだけでは判断できない、ビジネス機会の拡大の可能性を秘めているが、製造分野におけるローカライゼーションの強化や、それを支える国産品優遇調達制度が、計画どおりの経済効果をもたらすかは、やや長い目で見ておく必要がある。

(庄秀輝)

(サウジアラビア)

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