連邦参事会、9月の国民投票で男性の2週間の有給育児休業を提案

(スイス)

ジュネーブ発

2020年08月21日

スイス連邦参事会(内閣)は8月10日、9月27日に予定されている国民投票で、2週間の有給育児休業を男性に認める提案の可決を求めると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。「男性に妥当な育児休業を求めるイニシアチブ(国民発議)」が2017年7月に提出されており、同発議では、男性に4週間の有給育児休業を認めることを求めていた。しかし、連邦参事会と連邦議会は4週間の取得はコストが高すぎるため受け入れ困難として拒否。その後、連邦参事会と議会は2019年9月に2週間の有給育児休業取得を定める対案を採択し、同法案が可決されると、4週間のイニシアチブは撤回されることになっていた。

今回、連邦参事会は9月27日の国民投票で政府の2週間の対案の可決を国民に提案している。可決されると、2021年1月に発効する予定だが、否決された場合には4週間のイニシアチブが完全に撤回されない限り、同発議が別途、国民投票にかけられることになる。スイスでも、社会活動に関する男女格差が幾つかの分野で残っている。一般的な定年年齢と年金受給開始年齢は男性65歳に対して女性64歳としている。子供の出産時の有給の育児休業は女性には14週間が認められているが、男性には1~2日だけだ(被雇用者の場合)。連邦内務省の調査によると、欧州各国における男性の育児休業法定日数はオランダは5日、イタリアは7日、ベルギーは10日、英国とデンマークは約2週間、ドイツでは義務ではないが2カ月が推奨されている状況で、スイスの日数の少なさは際立っている。

2週間の男性育児休業期間中は、国の所得補填(ほてん)スキーム(APG)を通じて給付金が支給されることになり、自営業の男性も育児休業分の給付金が受領可能だ。APGは「新型コロナ禍」での店舗閉鎖命令による個人事業主の収入減に対する給付金の支払いにも用いられている(2020年3月26日記事参照)。連邦内務省社会保障局は、2週間の育児休業制度の導入には年間2億3,000万スイス・フラン(約267億円、CHF、1CHF=約116円)を要するため、制度導入後は被雇用者の場合、掛け金を現在の給与の0.45%から0.5%に引き上げることを見込んでいる。被雇用者の育児休業期間中の給付額は、出産前給与額の最大80%(自営業者の場合、最大日額196CHF、合計2,744CHFまで)とする予定だ。

(和田恭、マリオ・マルケジニ)

(スイス)

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