新型コロナウイルス対策のため420億フランの大型経済対策を発表

(スイス)

ジュネーブ発

2020年03月26日

連邦参事会(内閣)は3月20日、新型コロナウイルスによる影響を軽減するための一連の経済対策外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。320億スイス・フラン(約3兆6,395億円、1スイス・フラン=約114円)を投じて、雇用維持、賃金維持、個人事業主を支援する。

その主な内容は以下の通り。

(1)中小事業者に対するキャッシュフロー支援(200億フラン)。

新型コロナウイルス感染拡大により事業運営に係る被害を受けた事業者について(以下の条項同じ)、50万フランを上限に政府による100%保証の無審査融資を行う。50万フランを超える融資については、年間売上高の10%または2,000万フランまで政府が85%保証し、簡易審査付き融資を行う。政府は今回の50万フランを上限とする融資措置により、影響を受けた事業者の90%以上の資金ニーズをカバーできると想定している。連邦参事会(内閣)は連邦議会の承認を得て融資枠を設定予定。

(2)社会保障(基礎年金、休業保険等)支払い支援

事業者に対し、社会保障負担額の支払いの繰り延べを認めその期間分の金利を免除する。また連邦税について2020年3月1日から12月31日分の、付加価値税(VAT)などについては同年3月21日から12月31日分の支払い繰り延べを認め、その期間分の金利を免除する。あわせて、企業の債権者の徴収確定タイミングを待たずに税務帳簿の審査を行い、企業の資金繰りを迅速化するよう税務署に指示している。なお、これに関連して、2020年3月19日から4月4日までは、債権回収及び破産申し立て手続きを止めることを決定済み(後述)。

(3)部分的休業に対する給付の範囲拡大

これまで無期雇用者にしか適用されなかった部分的休業に対する給付について、派遣労働者、有期雇用、インターンシップ、家族経営事業について新たに適用。フルタイム雇用が失われた場合は一時金として3,320フランを請求できる。また失業状態になったあとの待機期間をなくし即日手当を支給開始できるようにする。

(4)個人事業主支援

個人事業主について,これまで配偶者または子供の病気などの介助によるものでしか認められなかった休業に対する給付が、扶養者の学校閉鎖に伴う介助、医者の指示による感染隔離、店舗や事業所などが政府の閉鎖命令対象となった場合にも拡大される。支払額は収入の80%で日額196フランを上限とする。

(5)その他

文化イベントキャンセルに関する支援(2ヶ月間2.8億フラン)、スポーツイベントキャンセルに関する支援(6ヶ月間1億フラン)も事業者に対する供与と融資の組み合わせで併せて講じられ、詳細は今後決定される。

今回の経済対策は、3月13日付けですでに発表されていた100億フランの対策と合わせると420億フランの資金供給を行うものとなり、過去2008年の金融危機の際に銀行の安定化のため600億フランが投入されたときの対策に次ぐ規模になる。

また、店舗閉鎖や利用客減少に苦しむレストランや商店など数多の企業の資金繰り対策として、連邦参事会(内閣)は3月19日、債権破産法第62条における感染や騒乱害時の特別措置条項に基づき、裁判手続きの一時停止(3月19日から4月4日まで)、債権に基づく破産申し立ての禁止(4月19日まで)を発表。これは、新型コロナウイルス感染拡大の緊急事態にかんがみ中小企業者への債権回収を猶予し救済するためのものである。

(和田恭)

(スイス)

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