外国人労働者の雇用を3分野に限定する方針、産業界から強い反発

(マレーシア)

クアラルンプール発

2020年08月06日

人的資源省(MOHR)は7月29日、同日の下院議会におけるアワン・ビン・ハシム人的資源副大臣による「外国人労働者の雇用を建設業、プランテーション、農業のみに限定する」という発言内容に関する声明を発表した。

マレーシア人の雇用を優先

新型コロナウイルスの影響により、例年3%台を維持してきた失業率が5月には5.3%に上昇したことから、政府はマレーシア人の失業者や新卒者など若年層の雇用促進に力を入れている。こうした中、サラバナン人的資源相は6月22日、マレーシア人の就職機会を優先するため、「全業種における外国人労働者の新規雇用を2020年いっぱい凍結する」と発表した。

突然の発表に産業界から反発

MOHRは、アワン副大臣の発言について、年内の新規雇用凍結解除後における外国人労働者の雇用方針について述べたものとし、特に需要が多い3分野のみに雇用を認めることを検討していると説明した。声明は、今後の新型コロナウイルスの感染状況や労働市場の動向を踏まえ、あらためて検討すると結んでいるが、産業界からは抗議が相次いでいる。

マレーシア製造業者連盟(FMM)のソウ・ティエン・ライ会長は、突然の政府発表に対し、「国を支える輸出を中心とした製造業に大きな損害を与える」として、政府に再考を強く求めた(「ザ・エッジ」紙7月31日)。マレーシア経営者連盟(MEF)も、産業界との議論を経ていない今回の発表に遺憾の意を示している。MEFによると、約200万人の外国人労働者のうち、建設業、プランテーション、農業の3分野が占める割合は42%に止まり、残りの半数以上は製造業とサービス業に従事しているという。MEFのシャムスディン・バーダン会長は、「外国人労働者の仕事をマレーシア人で補填することはほぼ不可能」と述べている(国営ベルナマ通信7月31日)。

日系企業においても、業種を問わず一定数の外国人労働者を雇用している企業が少なくない。年内の新規雇用凍結を受けて、マレーシア人に切り替えようと試みる企業もいるが、なかなか定着しないのが悩みだという。加えて、今回の雇用分野の限定は、事業継続に大きな打撃を与えるとして懸念の声が広がっている。

(田中麻理)

(マレーシア)

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