上半期の貿易収支、223億ドルの黒字、中国向け農産物輸出が増加

(ブラジル)

米州課

2020年08月21日

ブラジル経済省は7月1日、2020年上半期(1~6月)の貿易収支(国際収支ベース)を発表した。輸出(FOB)が前年同期比7.1%減の1,017億1,957万ドル、輸入(FOB)が5.2%減の793億9,652万ドルで、貿易収支は223億2,305万ドルの黒字となった(添付資料表1参照)。

輸出を国別にみると、第1位の中国向けが前年同期比14.6%増加し、輸出全体の33.8%を占めた(添付資料表2参照)。主に大豆(30.9%増)や牛肉(165.4%増)といった1次産品の輸出が大幅に増加した。一方、中国に次ぐ輸出先の米国向けは同31.7%減で、航空機(75.2%減)や原油(53.8%減)が大幅に減少した。航空機メーカーのエンブラエルの社長兼最高経営責任者(CEO)のジョン・スラタリー氏は3月の時点で「新型コロナウイルスの感染拡大の影響を恐れる一部の顧客からの納期延長の要請に応じている」と述べており(2020年3月7日付「アエロマガジン」紙)、米国はブラジルの航空機の輸出相手国第1位であることを踏まえると、この納期の延長が航空機輸出額の減少につながっているとみられる。

また、2019年1~6月では米国に次いで輸出額の多かったアルゼンチンへの輸出も、2020年上半期には前年同期比で28.1%減少した。同国向け主要輸出品目の自動車が56.4%減少しており、新型コロナウイルス感染拡大により工場の操業が限定的だったことなどが原因と考えられる。他方、特徴的だったのは、シンガポール向けの輸出額が構成比は2.0%とわずかなものの52.0%増加したことだ。原油・燃料油の輸出増加がこの要因だが、背景には、国際海事機関(IMO)が環境保護のため2020年1月に設定した新たな規則があるとみられる。IMOによると、新たな規則では、船舶は燃料の硫黄含有量を現在の3.5%から0.5%に減らす必要がある。ブラジル経済省の貿易統計によると、低硫黄燃料の代替品としても使えるディーゼル油のシンガポール向け輸出額が62%増加しており、結果として、世界有数の港湾都市国家シンガポールへの原油・燃料油の輸出額が増加したと考えられる。

主要輸出品目別に見ると、輸出品目の上位は大豆や原油、鉄鉱石、農産物などの1次産品が占めている(添付資料表3参照)。最大の輸出品目の大豆の輸出(構成比20.2%)が前年同期比34.6%増、牛肉(構成比3.0%)が42.2%増、サトウキビ(2.7%)が47.3%増の大幅な増加となったが、輸出(FOB)全体では7.1%減少した。輸入品目では、資本財を除く全ての品目で減少した。

(高氏朋佳)

(ブラジル)

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