電気料金や法人税などさらなる企業支援策を検討

(インドネシア)

ジャカルタ発

2020年08月13日

インドネシア政府は新型コロナウイルス感染症関連の国家経済復興(PEN)プログラムとして、695兆2,000億ルピア(約5兆54億円、1ルピア=約0.0072円)の予算を組み、経済・社会の立て直しに取り組んでいる。しかし、現時点で執行額は141兆ルピアと、全体の20%にすぎず、ジョコ大統領は閣僚に対して、「危機感が足りない」と強く非難している(「ジャカルタ・ポスト」紙8月3日)。インドネシア中央統計庁(BPS)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、第2四半期のGDPは前年同月比で5.2%減少し、1998年のアジア通貨危機以降で最大の落ち込みとなった。経済回復への施策が急務となる中、複数の経済刺激策が検討段階に入っている。

電気料金の最低料金制撤廃

1つ目は、電気料金の割引だ。インドネシア政府は国営電力PLNに対し、「社会」「ビジネス」「産業」(注1)の3部門の事業者の7~12月の電気料金について「最低料金制」を撤廃するよう指示し、政府とPLNが検討を進めている。最低料金制では、月額契約容量1,300ボルトアンペア(VA)以上の事業者(大規模・中小事業者を想定)は、使用量にかかわらず月40時間分の基本料金を支払う。また、900VA以下の事業者(小規模事業者を想定)にも、基本料金が課されている。同制度が撤廃された場合、基本料金は免除となり、実際の利用分のみ支払えばよいこととなる。本優遇策は約40万の事業者に適用される見込み。PLNに発生する3兆ルピア程度の損失は政府が補填(ほてん)することしている(「ジャカルタ・ポスト」紙8月3日)。

前払い法人税の減免措置

また、スリ・ムルヤニ財務相は8月5日のプレスカンファレンスにおいて、既に打ち出している税制優遇措置(2020年7月29日記事参照)のうち、月次の前払い法人税(PPh25)の減免措置について、減額率を現行の30%から50%に引き上げると発言した(「テンポ」紙8月6日)。ジェトロが6月に当地日系企業向けに行ったアンケート結果PDFファイル(1.5MB)では、362社中147社(41%)が本優遇措置を活用している。今回の措置は企業による利用率をさらに高めるのが狙いとみられるが、「前年度に税務上で利益を出していなければ恩恵を受けることはできず(注2)、どこまで利用率が伸びるかは不明」(当地日本人公認会計士)という見方もある。

(注1)PLNのウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、「社会」は宗教施設、学校、政府病院、民間企業の訓練施設など、「ビジネス」はサービス業、金融、商社など一般的な企業、「産業」は工場などを指す。

(注2)インドネシアの税法では、前年度の業績を基に、当該年度の月次の前払い法人税(PPh25)の支払額が決定されるため、前年度の業績が赤字などの場合、当該年度はPPh25の納付対象外となる。

(上野渉)

(インドネシア)

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