米衣料品大手アシナ・リテール・グループ、破産法第11章の適用を申請

(米国)

ニューヨーク発

2020年08月03日

米国衣料品大手のアシナ・リテール・グループ(本社:ニュージャージー州)は7月23日、米連邦破産法第11章(Chapter 11、日本における民事再生法に相当)の適用を申請した。同社は声明PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)で、事業運営維持に向けて1億5,000万ドルの資金を調達する一方で、傘下に持つジャスティスやアン・テイラーなどの一部店舗閉鎖などを通じて、ブランド・ポートフォリオの最適化を進めていくとの意向を明らかにした。

実店舗への高依存度に加えて、新型コロナウイルス感染拡大による需要減が影響

同社が裁判所に提出した申立書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでは、破産申請に至った要因として、オンライン販売への移行が進む中で実店舗への依存度が高すぎたこと、新型コロナウイルス感染拡大を受けた自宅待機令により店舗閉鎖を余儀なくされ、販売目標の未達、在庫の積み上がり、利益率低下につながったことなどが挙げられた。同社は、3月中旬から全ブランドの店舗を臨時閉鎖しており、これにより3カ月間の総売上高は45%減となった。

アシナ・リテール・グループのキャリー・テフナー暫定会長は声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで「当社が持続可能な成長の促進や営業利益率の改善、財務基盤の強化を掲げたことで得られた有意な進展は、新型コロナウイルスの感染拡大によって大きく崩れた」と述べた。

1962年にアパレルチェーンのドレスバーンとして創業したアシナは、さまざまなブランドを買収する多角化戦略によって成長を遂げてきた。しかし、若い女性がザラやH&Mなどのファストファッションやオンラインショップに目を向けつつある中で、アン・テイラーやロフトの高価格帯ブランドを買収(2015年)したため、熱狂的なファンはいたものの、売り上げの増加にはつながらなかった。

米分析会社ISS EVAの基礎研究グローバル・ディレクターであるアンソニー・カンパーニャ氏は「アシナの多角化戦略が裏目に出た」と指摘し、「小売業界全体がオンラインに移行する中で、ショッピングモールに出店するようなブランドの占める割合が高く、このような誤算が破産へとつながった」と述べた(「ニューヨーク・タイムズ」紙電子版7月23日)。

(樫葉さくら)

(米国)

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