連邦政府、チューリヒ大学スピンオフ企業と新型コロナ治療薬の調達契約を締結

(スイス)

ジュネーブ発

2020年08月20日

スイス連邦政府は8月11日、スイスのバイオ医薬品企業モレキュラー・パートナーズが開発する新型コロナウイルス治療薬候補「MP0420」の調達契約を締結したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。この契約により、連邦政府は初回分として20万回分、その後最大で300万回分の供給を受けられる権利を確保した。

モレキュラー・パートナーズはチューリヒ大学のスピンオフ企業で2004年に設立され、タンパク質の構造情報を利用した「DARPin」と呼ばれる技術を用いた治療薬を研究・開発している。今回契約された薬は、新型コロナウイルスに罹患(りかん)した後の治療薬としての機能と、予防薬としての機能の両方を兼ね備え、2020年秋に初回の臨床試験を予定している。スイス市場で薬事認可が得られた後は、主に治療薬として使用される予定だが、医療従事者やハイリスクを抱える人に対して感染を予防するために投与することも可能だ。同社は7月に米国の医薬品開発製造受託機関(注)であるAGCバイオロジクスと契約し、世界規模の供給を可能にするための生産体制を確保していた。

スイス連邦政府はさまざまな新型コロナウイルス対策を講じており、8月7日に締結した新型コロナウイルスワクチン調達契約(2020年8月13日記事参照)に続き、重症患者のための治療薬の調達も重要視している。

(注)CDMO(Contract Development and Manufacturing Organization)と呼ばれ、医薬品の製造だけでなく、開発段階からの受託、代行を行う機関。

(城倉ふみ)

(スイス)

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