通年のGDP成長率予測値をマイナス8.0~6.0%に下方修正

(香港)

香港発

2020年08月18日

香港特別行政区政府(以下、香港政府)は8月14日のプレスリリースで、2020年通年の実質GDP成長率の予測値をマイナス8.0%~マイナス6.0%に修正すると発表した。4月末に香港政府が発表した同予測値(マイナス7.0%~マイナス4.0%)からの下方修正となった。また、2020年第2四半期のGDP成長率の確定値は、推計値と変わらずマイナス9.0%だった。個人消費支出は前年同期比14.2%減、サービス輸出も46.1%減と、いずれも統計開始以降最大の下げ幅を記録した(2020年8月4日記事参照)。

香港政府の経済顧問である欧錫熊氏は「香港経済の短期的な見通しは極めて不透明な状況が続いている。2020年上半期(1~6月)の実績値や下半期の経済見通し、そして、政府による大規模な救済措置の効果を考慮した上で下方修正を行った」と説明した。欧氏は「仮に域内の新型コロナウイルスの感染拡大を短期間で封じ込めることに成功し、外部環境が急激に悪化することがなければ、GDP成長率はマイナス7.0%~マイナス6.0%に収まる可能性がある」との見通しを示した。

香港浸会大学財務・決策学部の麦萃才准教授は「2020年末時点の新型コロナウイルスの感染状況と米国大統領選挙の結果が世界経済に影響を与える可能性がある」とした上で、「域内の新型コロナウイルスを制御できない場合、あるいは冬に入って再度感染が拡大した場合、香港政府は通年のGDP予測値を再度、下方修正することもあり得る」と指摘した(「明報」8月15日)。香港中文大学ビジネススクールの李兆波上級講師は「香港政府は、第3四半期に新型コロナウイルスが収束して、経済状況が好転すると見込んでいたが、7月に域内感染が再拡大したため、第4四半期に経済が回復しても、通年のGDP値が大きく好転することはないだろう」と述べた(同)。

また、香港の経済団体である香港総商会(HKGCC)の梁兆基会長は「米中対立や新型コロナウイルスなど、依然として市場には多くの不確実性が存在する」と指摘した上で、「今年の下半期に経済が急回復することは見込めないため、通年のGDP成長率はマイナス8.0%程度になるのではないか」との見通しを示した(「香港経済日報」8月17日)。

(吉田和仁)

(香港)

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